「ポスト内燃機関」へ早めの備えを 車&“それ以外”の現状【連載】和田憲一郎のモビリティ千思万考(2)

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「脱炭素」の流れは内燃機関への逆風となり、その強さは増している。規制対象はガソリン車・ディーゼル車はもちろんだが、自動車以外も例外ではない。欧州の「Fit for 55 package」を軸に、内燃機関製品の現状と今後の展開を考える。

すでに代替商品を揃える動き

 このように欧州で規制が進むことに対して、現実はどうかと見てみると、業界関係者は周知のことかもしれないが、意外に進んでいるようだ。

 例えば、船舶は重油、舶用ディーゼル油を使用してきたが、2018年4月に国際海事機関が排出ガスの大幅な削減を決定して以来、一気に船舶のCO2排出量削減に動いている。このため、欧州でのフェリー、クルーズ船などの船舶には、かなりの比率でディーゼル電気推進システムが搭載されている。これはディーゼル発電機で発電し、その電気で電動機を駆動して船舶のスクリューを回す方式である。ある意味、シリーズハイブリッドタイプである。

 また完全電動船の導入も加速している。オランダの大手造船会社ダーメングループ(Damen Group)は、フェリーや定期運航便などに完全電動船を多数導入している。このような背景から、今回の規制に対してそれほど驚かなかったのかもしれない。

 また建設機械での電動化も進んでいる。大手のボルボ・コンストラクション・エクイップメント(Volvo Construction Equipment)やサンドビック(Sandvik)、JCバンフォード(JCB)などでも車種ラインナップとして、ショベル、ホイールローダーなど多くの車種ラインナップで電動化の商品を揃えている。

 農業機械でもすでに多数のメーカーで、トラクターなど電動化の商品を揃えており、クルマと同様、ハイブリッドもあればフル電動も存在している。この背景として、2021年4月の「EUタクソノミー委任規則」(草案)により、今後ゼロエミッション以外をサステナブル投資の対象から除外すると公表したことも影響しているようだ。

 さて、日系企業はというと、船舶、建設機械、農業機械などは、どちらかといえばSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の一環として、商品化を進めてきた。しかし、欧州の動きは本格的に事業見直しをしているように思われる。

 欧州委員会の狙いも、環境面での配慮のみならず、首尾一貫した政策枠組みをもって目標を打ち出すことで、欧州の産業や企業が「先駆者」になれると主張している。日系企業はまだ大丈夫と「ゆでガエル」的に考えていると、欧州市場や他市場を奪われ、後塵を拝す結果になりかねない。内燃機関、つまりエンジン活用の商品を扱っている企業は、次世代に対して早めの備えが必要であろう。

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