新幹線の「アイスクリーム」なぜあんなに硬い? スプーンで削るか、溶けるまで待つか
一般人も知っている有名さ
新幹線の車内で買えるアイスクリームは、とにかく「硬い」ことで有名だ。鉄道ファンだけではなく、新幹線に乗ったことのある人なら「ああ、そういえば……」と思い出せるのではないか。
アイスクリームを買った人たちは、次のように大別される。
・悪戦苦闘しながら、勢いよく食べる人
・スプーンの先で削りながらコツコツ食べる人
・溶けて柔らかくなるのをジッと待つ人
・一緒に買ったホットコーヒーを垂らす人(邪道?)
とにかくまぁ、とにかく硬いのである。井村屋の「あずきバー」のライバルみたいなものか。
製造はスジャータめいらく
新幹線のアイスクリームは、愛知県名古屋市にある乳製品製造・販売のスジャータめいらくの製品だ。発売されたのは1990(平成2)年頃だとされている。
硬いことは長らく知られていたが、人気に火がついたのは2010年代になってからだ。SNSなどで評判が広がり、売り上げが右肩上がりになった。実に今っぽい展開だ。
ただ、同社は最初から硬さを追求していたわけではない。もともとこのアイスクリームは、スジャータめいらくの創業者・日比孝吉氏が、新幹線で販売するにふさわしい、高級感のある特別なものという狙いで生み出したものだった。
高級感を出すには、
「滑らかで濃厚な味わい」
が求められる。それを実現するには、空気の含有量を低くしてアイスの密度を高めるとともに、乳脂肪分の割合を多くしなければならない。その配合を追求した結果、溶けにくく硬いアイスクリームになったというわけだ。
JR東海パッセンジャーズのウェブサイトには「“硬さ”と“濃厚さ”を生む空気含有量の低さ」として、次の文言が掲載されている。
「濃厚な味わいと滑らかな舌触りを演出するため、アイスの空気含有量(= オーバーラン)を大幅に低くし、アイスの密度を高めています。空気含有量を大幅に低くし、密度を高めることで「硬く」「ねっとりした重みのある味」生み出しています」
一般的なアイスクリームの空気の含有量は60~100%だが、新幹線で販売されているものはこれより低い。また、乳脂肪分の濃度は15.5%で、通常のアイスクリームの倍にあたる濃度だ。さらに加熱殺菌する前の生乳を使っているため、ほかにはない味わいが生まれている。