ダイハツはなぜ女性に選ばれるのか? ユーザー率なんと7割、「かわいい」だけじゃない車づくりの本質とは
素材や安全にもこだわる

2020年に発売された「ミラ トコット」。同車の開発は20~30代の女性社員を中心に進められた。初めて車を購入する若い女性をメインターゲットにし、ただかわいいデザインにするのではなく、運転のしやすさや安全装置にも注力した。
例えば、運転する際の死角を極力減らし、車幅感覚がつかみやすいスクエア状のボディデザインに。さらに安全装備においても、衝突回避支援システム「スマートアシストIII」を搭載。
極めつけは発売当時、エントリーモデルが107万4600円、最上級グレードでも142万5600円というお手頃価格を実現したことだ。現在はエントリーのL「SA III」が116万円台と価格が異なっているものの、初めて車を買う人にとっては手を出しやすい価格帯だ。
同車の商品企画を担当したダイハツ工業の西山枝里氏は披露発表会において、従来の女性向け商品にありがちなかわいさや格好良さの要素を盛るという発想から変えたと話している。ユニークなのは、盛るのではなくシンプルにしていくという視点だろう。
女性がかわいいと思える商品は日々変わっている。ダイハツは女性の感性がかわいいに引かれるだけでないことに着目し、プロジェクトに取り掛かったのではないか。
ミラ・トコットのシンプルなパッケージングは話題を呼び、発売開始から1か月で約9000台の受注を達成。購入層においても子離れした親やシニアなど、幅広い年齢層にわたる。またほぼすべての購入層が「スマートアシストIII」搭載グレードを選ぶなど、ユーザーが安全性能にもこだわっていることがわかった。
ミラ・トコットの発表会で、開発責任者の中島雅之チーフエンジニアは開発時のエピソードを明かしている。パワーステアリングの感触が軽すぎると驚いたものの、女性社員にはとても運転しやすいと好評価だったことを受けて「男性目線だけではだめだ」と感じたそうだ。餅は餅屋ではないが、やはりターゲットの感性を一番理解しているのはターゲットということだろう。
女性ユーザーを魅了するのは技術の先進性ではなく、顧客への理解と寄り添いだ。ダイハツの次の展開にも期待が集まる。