120km/hで走っても捕まらない! 高速道路「最高速度」の一部引き上げ、その素晴らしき効果と苦悶の課題とは
速度差や流れ、課題に

だが、120km/h採用区間がどんどん増えていけば、即ハッピー……という単純な話でもない。速度制限引き上げで120km/hが採用されるには、いくつかのハードルが存在する。
まず、交通規制基準によって、120km/hが採用されるための諸条件がある。これは例えば、「構造適合速度および設計速度が120km/h」「実勢速度が100km/h以上」「死傷事故率が高くない」などで、これを満たして初めて120km/h運用が可能となるのである。
そもそも、120km/hの採用が検討されたのは、制限速度と実勢速度のギャップを埋めることが目的だった。例えば制限速度が100km/hのある区間では、見通しがよく、道が真っすぐなので、実勢速度が110km/hを超える。2つのスタンダード(制限速度100km/hと実勢速度110km/h)が同一区間に混在するのは危ないので、ならばいっそ制限速度の方を、問題なさそうであれば上げてしまう――というわけである。
同じ区間に速度差のある車両が混在する危険性の議論もある。警察庁によると「速度差が40km/hを超えると事故発生率が上がる」という。120km/h区間では、120km/hで走る車両と、80km/h制限で走る大型貨物車が混在することになる。その点への何らかの対応は必要だろう。
また、120km/h区間では、第2走行車線(3車線あるうち真ん中の車線)に車が集中しがちな点も、ドライバーの間で問題視されている。比較的低速で走る車両が第1走行車線(左の車線)をもっと利用するようになれば、第2走行車線も混雑せず、第2走行車線から追い越し車線(右の車線)に低速で侵入してくる車も減るのではないか……といったことが指摘されている。
これについては、他国で実際に運用されている「車線ごとに速度制限が違う」というルールを道交法に新たに組み込むか、あるいはドライバーが車線ごとの役割をもっと意識すれば改善されるのでは、といった声もある。
このように、「120km/h運用」には、いくつかの未解決の課題、あるいは議論がまだ必要な領域が存在する。しかし目に見えるメリットがあるのもまた事実である。この記事を執筆するにあたって調べてみた限りでは、新たな120km/h区間の誕生には、世論が反映されやすい印象があった。快適で便利な交通ルールの拡大を、ドライバー自身の手で実現したいところだと筆者は思う。