運送会社の「営業担当」はなぜ成長しないのか? 背後に古びた業界構造 新規案件つぶされ、雑用要員も――という絶望
雑用要員として消費 運送会社の営業担当者

「今日もトラックに乗ってるよ…」。知己の運送会社の営業担当者から、こんな愚痴の電話をもらったことも一度や二度ではない。
筆者もそうだが、運送会社や倉庫会社の営業担当者は、もともとトラックドライバーや倉庫作業員であることが多い。その経験が「災い」し、繁忙時の応援要員として駆り出されてしまうことが多いのだ。
「ドライバーはいいよ。走った分だけ歩合がもらえるから。だけど、営業の俺たちの評価は、あくまで営業成績だけ。月の半分以上、『ドライバーが足りないから』と言われてハンドルを握らされた挙げ句、『営業目標が未達じゃないか!』って怒られてもなぁ…」。このように嘆き、転職していった知り合いもいる。
もっと切実な事情もある。
そもそも、世の運送会社・倉庫会社の大半は中小企業であり、慢性的な人不足に悩まされている。そもそも営業担当者を抱えていない会社も多いのだが、営業担当者がいれば、どうしても助っ人要員として使い倒されてしまうのだ。
筆者も経験がある。
新規案件が始まった時には、荷役要員として、集荷先の物流センターまで出向き、その後の仕分け作業も行った。集荷が18時ごろスタート、持ち帰っての仕分けが翌朝4時ぐらいまでかかったので、当時は日中に営業活動を行う余裕はほとんどなかった。
物流不動産ビジネスの大御所である大谷巌一氏(イーソーコグループ会長)も若かりし頃、倉庫作業員らから「お前の取ってきた仕事がきつい!」と大クレームを浴びたため、一升瓶を持参し謝罪した後、倉庫作業員らに交じって、しばらく倉庫作業を手伝っていた経験があったそうだ。
営業担当者は使い勝手の良い雑用要員として使い倒されがちである。
協会関係のイベントや勉強会と称した飲み会や荷主の安全会議などに出席し、会社が展示会に出展しようものならば手配全般を行い、国際標準化機構(ISO)取得の際にはプロジェクトリーダーを押し付けられるなど…。
営業活動というのは、行ってすぐ、目に見えるような成果が上がるとは限らない。限らないから、楽をしていると思われがちでもある。結果、「どうせ大した仕事していないんだったら、現場を手伝えよ!」となってしまうのだ。