イラク戦争勝利のカギは「コンテナ」「電子タグ」 米軍ロジスティクスは湾岸戦争から劇的に進化していた!

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1991年の湾岸戦争や2003年のイラク戦争など、最前線の戦いの場面ばかりが話題になるが、実際は戦いの基盤となるロジスティクスが極めて大切であり、勝敗のカギを握っていた。そのロジスティクスの“進化”を含めて解説する。

コンテナの有用性

コンテナのイメージ(画像:写真AC)
コンテナのイメージ(画像:写真AC)

 次に、コンテナの導入が戦争の様相に及ぼした影響について考えてみよう。実は、コンテナ化、さらにはパレット化の結果、必要な物資の迅速かつ大量の輸送が可能になったのである。「軍事ロジスティクスにおける革命」のひとつとされるゆえんである。

 アメリカ軍が民間のコンテナを導入し始めたのは、ベトナム戦争後半になってからである。この地域に展開された50万以上の同国軍兵士の戦闘と生活を支えるためには、どうしても効率的なロジスティクスが必要とされたからである。

 その後、アメリカを中心とした世界各国の軍隊で、補給物資の迅速な配送を可能にするISO(国際標準化機構)コンテナが広く使用され始めたのは1980年代であり、湾岸戦争では広く用いられ、4万ものISOコンテナが使われたという。だが、その半分は内容物が分からず、現地で開梱(かいこん)して確認作業が必要であったが、イラク戦争では、RFIDの導入によってこの問題は解決された。

 つまり、湾岸戦争の時には前線まで送られてきた軍事コンテナに何が入っているのか、開梱するまで全く分からなかったそうである。水が必要なのに開けてみたら糧食しかなかった、違った種類の弾薬が届いたといった事態が頻繁に生じたらしい。

 例えば、この戦争でのコンテナの運用を巡る問題点についてパゴニスは、1個のコンテナに複数の発送先が含まれていた事実を以下のように指摘する。「混載のコンテナが少なくなかったばかりか、中身の分からないコンテナも多くあった。船積み書類の記載とコンテナの中身とが一致しないこともよくあった。中身を確かめるだけのために、4万1000個のうち、2万8000個前後のコンテナを埠頭(ふとう)で開梱しなければならなかったほどだ」(『山・動く』)。

 それが約10年後のイラク戦争では、コンテナにRFIDが装着された結果、何がどこにあるのかシステム全体で把握できるようになった。必要な量の補給物資を必要な場所に送ることができるようになったのであり、こうした技術を無視して今日の戦争は戦えない。

 いわゆる「ジャストインタイム」方式で補給を行うためには、(1)どこで、誰が、どれほどの補給物資を必要としているか(2)補給物資の要求に対して所要の物資を送り出す手配ができているか(3)送り出した補給物資の配送状況――を正確に掌握する必要がある。そこで登場したのがRFIDである。

 繰り返すが、今日のアメリカ軍では、コンテナだけでなくコンテナの中に収納した個別の内容物についても、その所在を把握できる態勢が整っている。つまり、ロジスティクスの「可視化」の実現である。

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