イラク戦争勝利のカギは「コンテナ」「電子タグ」 米軍ロジスティクスは湾岸戦争から劇的に進化していた!
大量の補給物資、戦場近くに

こうした恵まれた政治状況の下、軍事の次元で、(1)パウエル・ドクトリンに従って、戦争までの約6カ月間、武器弾薬、糧食などを中東地域に集積するなど必要な準備を整えた(2)兵士の訓練(例えば砂漠の戦場での)を実施し、満足できる熟練度にまで達していた(3)アメリカを中心として、情報技術(IT)革命の成果を軍事力の中に組み込むことに成功した(4)同盟国および友好国との連携を密にし、アメリカ軍内の共同作戦および同盟国との連合作戦を円滑に実施し得た――などの条件がそろったのである。
とりわけ、事前に大量の補給物資を戦場の近くに集中し得た能力は特筆に値し、こうした経緯については、W・G・パゴニス著、佐々淳行監修『山・動く――湾岸戦争に学ぶ経営戦略』(同文書院インターナショナル、1992年)に詳しい。
実は、この戦争でさらに興味深い事実は、地上での戦いが約100時間で終結したのに対し、その前段階の配備に6カ月の時間があった事実に加え、後段階の撤退(「砂漠の送別」作戦)に10カ月を費やした点である。この後段階の「砂漠の送別」作戦では、兵士はもとより、兵器や機材を戦場となった砂漠地帯から飛行場や港湾に移動させ、それらを中東からアメリカ本国へと持ち帰ったのである(『山・動く』)。
湾岸戦争で実質的に多国籍軍のロジスティクスを統括したパゴニスは、以下のような結論を下している。すなわち、「この戦争は、戦場でというより後方の支援作戦本部において、ワシントンとリヤドでというより、主要補給ルートにおいて戦われた。何カ月にも及ぶ後方支援の準備が行われたからこそ、空中と地上での戦闘を1012時間で終わらせることができたのだ。そして、戦争前から戦争期間中まで、何カ月もかけて計画を立てていたから、戦域からの撤退を成功裏に完了できたのである」(『山・動く』)。
湾岸戦争でのこうしたロジスティクス担当者の活動を高く評価して、アメリカ議会報告書は次のように記している。すなわち、「アメリカのロジスティックスは歴史的に見ても成功を収めた。戦闘部隊を、地球を半周して移動させ、世界規模の補給線(ライン)を構築し、前例がないほどの即時対応性を維持し得た担当者は称賛に値する」。