イラク戦争勝利のカギは「コンテナ」「電子タグ」 米軍ロジスティクスは湾岸戦争から劇的に進化していた!
湾岸戦争のロジスティクス

ではこれから、1990~91年の湾岸危機および湾岸戦争を事例として、ロジスティクスの役割について、もう少し詳しく考えてみよう。
実は湾岸戦争は、必ずしも広く唱えられているような軍事技術の勝利であったとは言い切れず、また、一部の軍人が信じているような、権限の委譲が行われた結果、つまり自由裁量の付与だけで勝利し得たのではない。
なるほどこの戦争でアメリカを中心とする多国籍軍の圧倒的な軍事的勝利と、そこでリアルタイムで見せつけられた精密誘導兵器やステルス兵器の威力などの結果、その後、「軍事革命」あるいは「軍事技術革命」を巡る論争が巻き起こった。精度、射程、情報の領域における軍事技術の革新は圧倒的であるとされ、これによって戦争の様相が大きく変化したと考えられるのは事実である。
だが、ここで少し冷静に検討すべきは、果たして本当にこの戦争が、戦場の最前線を彩った軍事技術だけの勝利であったかについてである。
湾岸戦争の勝因について政治的次元として、例えば次のような前提条件が整っていた。
(1)国連安保理決議を採択するなど、国際社会の中で軍事力行使に対する一定の正当性を得た
(2)アメリカを中心としてアラブ諸国に働き掛け、この戦争を「中東アラブ世界vs.西洋世界」あるいは「イスラム教vs.キリスト教」といった対立構図が成立しないようにした
(3)ソ連(当時)とも頻繁に交渉し、同国に軍事力行使に対する一定の理解を示させることに成功した
(4)戦争勃発後、イスラエルを局外にとどめることに成功した
(5)軍事力行使に際し、明確な目標を掲げ、イラクへの過度な関与(例えば、サダム・フセイン政権の転覆など)を避けた
(6)アメリカおよびジョージ・H・W・ブッシュ同国大統領が示した優れた戦争指導あるいはリーダーシップ
(7)冷戦終結という国際環境の下でのアメリカとソ連の協調関係の維持