広島「福塩線」は利用者8割減! 収支はジリ貧、ローカル線に漂う無力感 歴代自民の“地方重視”とは何だったのか
JR北海道、四国は全線が赤字

JR各社のローカル線収支が出そろった。いずれも人口減少とコロナ禍のWパンチで大幅に悪化している。路線維持の願いはもはや風前のともしびになってしまったのだろうか。1両編成の列車が広島県の南東部に位置する府中市内を三次(みよし)方面に向かって進む。車内はガラガラ。まるで空気を運んでいる状態だ。広島県福山市の福山駅と三次市の塩町駅を結ぶJR西日本の福塩(ふくえん)線は、「北線」と呼ばれる府中~塩町間の輸送密度(1km当たりの1日平均利用者数)が2021年度で144。旧国鉄が分割民営化された1987(昭和62)年の16%まで落ちた。
100円の収入を得るのにどれだけの費用がかかるかを示す営業係数は、2019~2021年度平均で2760円。JR西日本の区間ではワースト6位に入る。中国山地を通る路線だけに、沿線人口の減少が利用者減に拍車をかけているわけだ。
「南線」と呼ばれる福山~府中間はおおむね30分に1本、列車が運行している。しかし、府中~塩町間は平日6往復、週末5往復しかない。しかも、午前7時台の発着が終わると、夕方まで空白時間が続く。府中駅近くの商店経営者は
「列車本数が少なく、とても生活路線にならない」
と顔をしかめた。
営業係数が「2万円」を超す区間も

府中市は人口約3万6000人。福山市のベッドタウンの色合いが強いが、ピークの1970(昭和45)年に比べると、約4割も人口が減少した。府中市都市デザイン課は
「沿線市町で構成する対策協議会でイベント列車を運行したり、駅舎でのイベントに補助金を出したりして利用促進に努め、路線を維持したい」
と話した。
路線別収支を公表していないJR東海を除く、各社の2021年度区間別収支が出そろった。JR東日本は東北地方、JR西日本は中国山地、JR九州は東部、南部を中心に赤字が深刻化している。JR北海道は8期連続、JR四国は2期連続で全区間が営業赤字だった。
JR東日本の陸羽東線鳴子温泉(宮城県大崎市)~最上(山形県最上町)間、JR西日本の芸備線東城(広島県庄原市)~備後落合(同)間のように、営業係数が2万円を超す大赤字区間もある。
2021年度はコロナ禍で鉄道の旅客が大きく落ち込んだが、ローカル線の沿線では人口減少が加速している。公表された数字には、JR各社の自助努力だけで太刀打ちできない強い逆風が表れている。