「私たちは戦争に加担しない」ドローン世界最大手の中国「DJI」がウクライナ・ロシアでの販売を中止したワケ

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2022年4月、ドローンのトップメーカーである中国企業「DJI」はウクライナ、およびロシアの両国で自社のドローンの事業から撤退すると発表した。いったいなぜか。

千載一遇のチャンスを捨てた「DJI」

DJIのドローン(画像:pixabay)
DJIのドローン(画像:pixabay)

 2022年4月、ドローンのトップメーカーである中国企業「DJI」はウクライナ、およびロシアの両国で自社のドローンの事業から撤退すると発表した。

 同年2月からのロシアによるウクライナ侵攻に際し、兵器として開発された攻撃用ドローンが大きな戦果を上げ、同社の民生用ドローンも偵察用として有効であることが世界的にも報道されている最中だった。

 そして、DJIのドローンから送られてくるウクライナの報道映像をはじめとするさまざまなデモンストレーションは、同社のビジネスにとって極めて有効であり、千載一遇のチャンスとも言えたのに――である。

 さらに言えば、「安全保障・情報漏えい」の観点から同社のドローンを数度にわたり「使用しない」と発表したアメリカ、日本など西側政府関係者に対する弁明の機会でもあり、それを生かさないのだろうかという疑問にも通じる。

そのようなウクライナ情勢下で、同社はなぜ早々に販売の撤退を発表したのであろうか。

きっかけはウクライナ第一副首相のツイート

、ウクライナのデジタル担当、ミハイロ・フェドロフ第一副首相によるツイッター
、ウクライナのデジタル担当、ミハイロ・フェドロフ第一副首相によるツイッター

 一説によれば、ロシア、ウクライナ両国での販売中止、事業撤退のきっかけは、ウクライナのデジタル担当、ミハイロ・フェドロフ第一副首相による、ツイッター上での3月の抗議だったと報じられている。

「戦争が始まって21日、ロシア軍はすでに100人のウクライナの子どもを殺しました。彼らはミサイルをナビゲートするためにDJI製品を使っているのです。DJIGlobalは、このような殺人のパートナーになりたいのでしょうか? ロシアがウクライナ人を殺すのを手助けしている製品をブロックしてください!(In 21 days of the war, russian troops has already killed 100 Ukrainian children. they are using DJI products in order to navigate their missile.@DJIGlobal are you sure you want to be a partner in these murders? Block your products that are helping russia to kill the Ukrainians!)」

 ロシアの侵攻開始から程なくアップルやアマゾンをはじめとする多数の企業の最高経営責任者(CEO)に対してメッセージを送っている同氏のツイートには、ウクライナ政府からDJIのフランク・ワンCEOに宛てた公式文書の画像も添付されている。

 その抗議の理由として、ロシアはDJIの機体に搭載されている「Aerospace」を悪用して、市民に対するミサイル攻撃を行っているというのが、ウクライナ政府の主張だった。

 そして、そのシステムの利用をウクライナ側にだけ認めよという要求が文書の内容である。当時報じられたのは、抗議によって同社の両国の事業撤退に至ったというものだ。

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