「私たちは戦争に加担しない」ドローン世界最大手の中国「DJI」がウクライナ・ロシアでの販売を中止したワケ

キーワード :
, ,
2022年4月、ドローンのトップメーカーである中国企業「DJI」はウクライナ、およびロシアの両国で自社のドローンの事業から撤退すると発表した。いったいなぜか。

賠償保険付帯という先進性

日本UAS産業振興協議会のウェブサイト(画像:日本UAS産業振興協議会)
日本UAS産業振興協議会のウェブサイト(画像:日本UAS産業振興協議会)

 筆者(J.ハイド、マーケティングプランナー)は2017年、日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の主催するドローンの民間ライセンスを取得した。日本では2022年12月に国家資格がスタートしたが、今でも国土交通省が推奨するさまざまな民間ライセンスが何種類もあり「どの資格が良いか」と、迷うほどである。

 しかしその当時から、DJIは独自のライセンス制度「DJI Camp」を提唱。日本の出版社からも教科書を発行し、実技テストやセミナーを同社の認定団体で実施していた。

 さらに、販売されている同社のドローンには、

「1年間・1億円」

の賠償保険が付帯していることに驚いた。つまり、DJIは自社の製品がはっきりと「危険」なものであり、購入者には「危険を管理する責任」を説いている訳なのである。

 これはドローンを持続可能性の高いビジネスに発展させるという固い意志の表れであると言えよう。そこには

「自分たちの製品によって人が傷つけられてはいけない、不幸になってはいけない」

という、メルセデスベンツやボルボをはじめとする欧州自動車メーカーのような覚悟が感じられるのである。

 実はラジコン模型の技術や製品は2015年ぐらいまで日本が世界でもトップクラスであり、DJIの製品の操縦装置などもそこからの転用が多く見られるぐらいだった。しかし、日本のラジコンメーカーは自らの製品に賠償保険を付帯する、ラジコンのライセンス制度を創設するという発想はなく、あくまで「趣味の延長なので自己責任で」という立場だった。

 唯一そこに日本ラジコン電波協会へ年会費を払うと、ラジコン操縦士に対して1億円の賠償保険が付くということが昭和の時代からの制度がホビー用途として脈々と引き継がれていたのが実態である。

 そのようなことを知っている筆者にとって、DJIが提供するライセンス制度や賠償保険の製品付帯は企業姿勢のレベルの違いを見せつけられる結果となった。

全てのコメントを見る