「私たちは戦争に加担しない」ドローン世界最大手の中国「DJI」がウクライナ・ロシアでの販売を中止したワケ

キーワード :
, ,
2022年4月、ドローンのトップメーカーである中国企業「DJI」はウクライナ、およびロシアの両国で自社のドローンの事業から撤退すると発表した。いったいなぜか。

人命尊重と非戦の企業意志

、ウクライナのデジタル担当、ミハイロ・フェドロフ第一副首相によるツイッター
、ウクライナのデジタル担当、ミハイロ・フェドロフ第一副首相によるツイッター

 同社のドローンは2018年11月のカリフォルニアの世界最大規模の山火事「キャンプ・ファイヤ」にあたり、州対策本部でも大いに活用されたと言われている。確かに同じ年に発売されたMAVIC2には赤外線カメラや拡声器機能が搭載されるなど人命救助に対応したモデルがラインアップされ、プロモーション動画にはイギリスの州警察が登場している。

 以来、ドローンには空撮から人命救助という新たな価値が生まれ、2020年には同社の機体による人命救助が全世界で累計500件を超えたことが発表されたのである。そして2022年に発表された最新型の中型ドローンMatrice30シリーズでは雨天や夜間、都市部でも安全に飛行可能であることに加え、人命救助をプロモーション動画のメインコンセプトとしている。

 2023年1月には、民間の有志によって寄付された80機近くのDJIドローンを背にした、フェドロフ副首相の写真が誇らしげにツイートされている。人命救助の新しい価値を定着させつつあるDJIにとって、その写真はあまり好ましいものではないだろう。

 現在では企業価値が15兆円を超えたと言われるDJI。同社は2022年10月にアメリカ国防省の「中国の軍事企業リスト」へ掲載されたことを受け、同年11月に「非戦」のメッセージを改めて以下のように発表した。

「私たちは、害を及ぼすような当社製品の使用を承認したり、可能にしたりしたことは一度もありません。これは、私たちが常に守ってきた倫理基準であり、これからも守り続けるものです」

 先述のMatrice30シリーズの公式動画では、その優れた性能が人命救助に役立つという映像が感動的に表現され、最後に各国の人命救助のクルーたちへ、次のメッセージが送られている。

「For Everyday Heroes(非日常的な状況に置かれ、英雄的な資質をもって行動する人物のこと)」

 DJIのウクライナ・ロシアでの「ドローン販売中止・事業撤退」には、単なるビジネスメリットの議論を超えた

「企業としての人命尊重と非戦の意志」

を強く感じるものなのである。

全てのコメントを見る