日本と大違い! イギリスで高齢ドライバー「免許返納しろ」の大合唱が起こらないワケ
イギリスでの高齢者に関する受け止め方

2021年のイギリスにおける車の衝突事故数は、70歳以上が起こしたものは8232件で全体の6%にすぎなかった。最多である30代の2万6195件と比べ、ずっと少ない。
走行距離や運転する機会が少ないことも考えられるので、「高齢者の運転が安全だ」とは言い切れないが、件数が少ないのは確かである。
英国王立事故防止協会(The Royal Society for the Prevention of Accidents) の高齢運転者向けホームページでは、「年を取るほど、ドライバーとしての経験が増えます。これは、年配のドライバーが、より安全で思いやりのあるドライバーになる傾向がある理由のひとつです」といった表現が見られる。
ここでは、免許返納の検討をすぐに勧めるのではなく、運転に関連する能力の衰えについては、再訓練であったり、全周視野を補助する補助ミラーや駐車センサーを付けたりといったことで改善できないかと提案している。夜道やラッシュアワー時など、ストレスがかかる運転を避けるなどして、より長く運転していけるよう提案している。
「運転に安全な年齢に上限はないと考えています」といった表記からは、高齢者を十把ひとからげにしない意識が感じられる。
イギリスでも、「運転について年齢制限を導入すべきではないか」という論争があるのは確かである。しかしタブロイド紙のデーリー・エクスプレスのウェブ版が2023年2月に行った「85歳で免許返納すべきか」というアンケートでは、回答者3462人中91%が「あからさまな差別」として反対した。日本とは世論が大きく違っている。
そして免許返納の問題は、社会的タブーであるとされている。とくに男性については運転が自己と深く結びついているという見方がある(2022年10月26日付、『BBC』)。
日本では2022年5月から、自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車」だけを運転できる免許制度が始まるなど、技術の進歩によって運転能力の衰えを補う取り組みも始まった。
現在は、世界全体で自動運転が浸透するまでの過渡期にある。免許返納の前にできること、今すぐ手に入れられる技術や環境の改善に目を向けていくことが、今求められているのではないだろうか。