トヨタはなぜイギリスから「撤退する」と言ったのか? EV・HVを巡る深い理由とは

キーワード :
, ,
トヨタ自動車がイギリス政府に対して、2030年にハイブリッド車の販売を禁止した場合、イギリスでの生産から撤退する可能性があると警告したことが話題になっている。その背景には、一体何があるのか。

変化する自動車メーカーの立ち位置

ロンドンにあるトヨタ自動車販売店(画像:(C)Google)
ロンドンにあるトヨタ自動車販売店(画像:(C)Google)

 トヨタ自動車がイギリス政府に対して、2030年にハイブリッド車(HV)の販売を禁止した場合、イギリスでの生産から撤退する可能性があると警告したことが話題になっている。

 企業として、政府に物申すのは通常のことだ。しかし、今回の出来事はイギリスだけでなく、ヨーロッパ、そして世界で進む電気自動車(EV)普及の流れのなかでの自動車メーカーの立ち位置を考えさせられるものでもある。

 本稿では、なぜイギリスに対してトヨタがこのような計画をしたのかを紹介した上で、グローバル企業と環境の問題を解説する。

トヨタがイギリスに撤退すると言った訳

今回のトヨタ自動車関連記事(画像:ザ・テレグラフ)
今回のトヨタ自動車関連記事(画像:ザ・テレグラフ)

 発端は7月31日のイギリス紙サンデー・テレグラフによる報道だった。

 同紙によると、トヨタ自動車がイギリス政府に対して、2030年にHVの販売を禁止した場合、イギリスでの生産から撤退する可能性があると警告したとしている。

 トヨタの警告の背景にあるのは、イギリス政府が脱炭素計画に基づき、2022年中に法案化を図っているためだ。イギリス政府は2020年11月17日、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止し、EVの普及を促進すると発表した。

 イギリスがこのような方針を発表したのは、2021年に第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)をイギリスのグラスゴーで開催することになっており、それに合わせて環境問題への取り組みを発表したいという思惑があった。

 その一方で、ヨーロッパだけでなく、アメリカやカナダなどで、電気自動車の促進やガソリン車の禁止に向けた動きが起こっており、その流れを受けたものともされている。

 イギリス政府は、この方針に従って現在法案化を進めている。法案ではガソリン車とディーゼル車の新車販売を30年に禁止し、EVの走行基準を満たした一部モデルのプラグインハイブリッド車(PHV)のみ、35年まで販売を認めるとしている。

 トヨタの警告はこの方針に異議申し立てを行った形になる。その背景となっているのがイギリスにおけるトヨタの立ち位置だ。

 イギリス自動車工業会やトヨタの統計によると、トヨタはイギリスの工場ではHVの

・カローラ
・プリウス

を生産している。

 法案化によって販売が認められるPHVは生産していない。法案の成り行きによっては、イギリスの工場で生産している車種は全て販売できないということになる。それを防ごうというのが今回の警告であろう。

全てのコメントを見る