路線わずか11km! でも、静岡鉄道が「地方鉄道の革命児」と呼ばれるワケ

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静岡鉄道は地方の中小私鉄ながら、革新的な取り組みを続けている。そうした取り組みを連発してきたため、地方鉄道らしからぬ存在感を発揮してきた。

近年は「LRT」と捉える向きも

1000形に代わり、静岡鉄道の新しい顔となったA3000形(画像:小川裕夫)
1000形に代わり、静岡鉄道の新しい顔となったA3000形(画像:小川裕夫)

 静岡県の県庁所在地である静岡市は、2003(平成15)年に旧静岡市と旧清水市による新設合併で誕生した。名称こそ静岡市を引き継いでいるが、それまでの静岡市と現在の静岡市は異なる自治体となっている。2023年は、新・静岡市が発足してから20年でもある。

 旧静岡市と旧清水市は、別々の自治体だった頃から歴史的なつながりが深い都市だった。そして、それら深いつながりは東海道という江戸時代に整備された街道や明治期に整備された東海道本線によって醸成されていった。

 両都市の玄関口である静岡~清水間はJR東海道本線で結ばれているが、両都市を結ぶ鉄道路線はそのほかにも新静岡~新清水間を走る静岡鉄道がある。かつて静岡鉄道は静岡県中部に複数の路線を有していたことから新静岡~新清水間には静岡清水線という名称がつけられているが、現在の静鉄の路線はひとつしかない。そのため、静岡県内では静鉄もしく静鉄電車という呼称で十分に通用する。

 静鉄は鉄道事業を中心とする交通事業者だが、その規模は小さく静岡清水線は約11.0kmしかない。かなり短い路線だが、同路線には15の駅がある。つまり、駅と駅の間隔が短く、それを理由に静鉄を次世代型路面電車(LRT)と捉える向きもある。

 近年、高齢化社会や環境問題の観点から路面電車が再評価されるようになった。いまだ路面電車は昭和の交通機関と見る向きが強く、イメージ刷新のためにLRT(= Light rail transit)という新しい呼称が用いられることも増えている。そして、行政がLRTに着目し、各地でLRT新設構想が議論されている。

 日本ではLRTを路面電車と解釈する向きが強いが、LRTは決して路面電車だけを指す用語ではない。また、路面電車もきちんとした定義がない。静鉄がLRTと解釈されるのは、そうした定義の曖昧さによるところが大きい。

 国内にはJR各社のほか、JRから転換した第三セクターの鉄道事業者、大手私鉄、準大手私鉄など事業体の規模はそれぞれ異なる。

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