路線わずか11km! でも、静岡鉄道が「地方鉄道の革命児」と呼ばれるワケ

キーワード :
,
静岡鉄道は地方の中小私鉄ながら、革新的な取り組みを続けている。そうした取り組みを連発してきたため、地方鉄道らしからぬ存在感を発揮してきた。

東急が大株主

地方私鉄では初となったステンレス車両の1000形。今年でデビュー50周年を迎えるなど、長らく市民から親しまれる存在だった(画像:小川裕夫)
地方私鉄では初となったステンレス車両の1000形。今年でデビュー50周年を迎えるなど、長らく市民から親しまれる存在だった(画像:小川裕夫)

 外板を薄くすることが可能になったことで、車体そのものを軽量化することに成功。それに伴い、走行時にレールに与えるダメージも軽減できた。これは線路を長持ちさせる効果も生むことになる。

 5200系は外板にステンレスを使用したが、そのほかの部分には鋼材を使用していた。そのため、東急はその後も車両の研究・開発を続ける。そして、5200系を進化させた7000系を1962(昭和37)年に登場させた。

 7000系は日本初のオールステンレス車両として鉄道業界で注目を浴びた。7000系は薄いステンレス板で組み立てられるので、ジェット溶接という特殊な溶接方法が用いられた。東7000系は、これまでの鉄道車両と比べて約20%の軽量化を達成している。

 東急のオールステンレス車両が登場してから11年後となる1973年、静鉄が1000形の運行を開始する。1973年当時、地方私鉄は戦前期から使用していた古い車両があちこちで走っていた。静鉄が導入した1000形は当時の最先端車両だから、本来なら地方私鉄がそんな新型車両を走らせることはあり得ない。

 これは静岡鉄道が、1941年から東京横浜電鉄(現・東急東横線)の系列に属したことや現在も東急が静鉄の大株主であることと無関係ではないだろう。1000形は長らく静鉄の顔として活躍した。2023年は1000形デビュー50年という節目にあたる。デビューから50年という歳月からもわかるように、1000形は老朽化が目立ち、技術面でも見劣りするようになった。

 静鉄は2016年から新型車両となるA3000形の運行を開始。その後もA3000を増備し、1000形は少しずつ引退している。いまだ1000形は現役で走っているが、完全な引退は近い。1000形は静鉄が地方私鉄の革命児と認識されるようになった車両だが、静鉄の革新性は車両だけに限った話ではなかった。

全てのコメントを見る