交通取り締まり、いくら厳しくしても違反が減らないワケ 「年間500万枚」の切符は意義あるのか

キーワード :
, ,
交通違反の取り締まりによって、警察は年間500万枚以上の切符を切っている。この「取り締まり」がドライバーの心に、そして行動にどう影響するのかを、心理学の知見を踏まえて検討する。

罰には副作用がある

反則金のイメージ(画像:写真AC)
反則金のイメージ(画像:写真AC)

 では交通取り締まりをもっともっと増やして、違反をしたら毎日確実に捕まるようにしたらよいのだろうか。筆者はそうは思わない。実現するには警察官の数を何倍にもしなければならないという問題もあるが、(2)の罰には、さまざまな副作用があるからだ。

 罰は嫌なことなので、罰を与えられた人の心の中には、悲しみ、苦しみ、憎しみ、恐怖、不安などの負の感情が発生する。つまり、少なからず人々の幸福を奪うことになる。そして、これらの感情は心にとってストレスであるため、このストレスを緩和させるための防衛機制が働く。具体的には、事実を認めようとしなかったり、違反を正当化したり、攻撃的な行動に出たり、取り締まりをした警察官が自分を憎んでいると思い込んだりする場合がある。これにより、不安全行動がかえって増加することもあるし、警察官との人間関係も悪化する。

 また、罰には「罰を与えられた状況を学習する」という特徴がある。警察官は、「スピード違反はいけないことだ」と理解してもらいたいのだが、取り締まられたドライバーは「なるほど、この道ではネズミ捕りをやっているんだな」ということを理解し、その道ではゆっくり走るが、他の道での行動が変わらない可能性がある。

 さらに、罰は与えられ続けた人を次第に消極的にするという問題もある。何かをやるたびに罰が与えられれば、何もしないことが安全だということを学んでしまう。また、罰は「それをしてはいけない」ということを伝えることはできるが、「どうすればよいか」を伝えられないという問題もある。

全てのコメントを見る