交通取り締まり、いくら厳しくしても違反が減らないワケ 「年間500万枚」の切符は意義あるのか
「16年に1度」の効果は?

さて、交通違反に対する取り締まりは、この中で(2)を狙ったものである。スピード違反をしたら赤い旗を持った警察官に止められて点数と罰金を取られた、つまり行動に対して嫌なことがあった、だから次はスピード違反をしなくなるだろうという考え方である。
もちろんこの考え自体は間違いではない。しかし、(1)~(4)の法則が成り立つには、行動と結果の同じ組み合わせが、比較的高い頻度で繰り返される必要がある。例えばある行動を100回したときに、99回嫌なことが起きれば(2)の行動適応が強く起きる。しかし、100回しても嫌なことが1回しか起きないと、(4)の行動適応が起きてしまう。私たちは早く目的地に着きたいから車に乗っているので、嫌なことがなければスピードを出したいのだ。
さて、冒頭に年間で切られる切符は500万枚以上と書いたが、これは頻度としてはどうなのだろうか。日本の運転免許人口は8000万人超であるから、単純割りをするとドライバー1人が取り締まられる頻度は16年に1度である。もちろん、8000万人の中にはほとんど運転しないペーパードライバーもいるし、警察に捕まるような運転をしない優良ドライバーも多数含まれている。その上、走行頻度や走行距離、走行場所もまちまちなので、よく捕まる人は16年に1度よりもずっと高い頻度で捕まっていると考えられるが、それでも毎週捕まるような人はいないだろう。
一方で、スピード違反を絶対にしたことがないとか、一時停止を全て完璧に止まっているとか、横断歩道の歩行者を100%見落とさずに必ず譲っているという人がまれであることは、道路を走っているだけで実感できる。その日の運転を振り返って、「今日は道交法違反をひとつもしなかった」と自信を持って言えるドライバーはほとんどいないだろう。
つまり、大多数のドライバーは多かれ少なかれ、日々多少の交通違反をしていることになるが、それが見つかって取り締まりに遭うのは「たまに」である。従って、現在の取り締まりの頻度では、(2)の行動適応よりも、(4)の行動適応、つまり「違反はしてもめったに捕まらないから違反が増える」が起きてしまう可能性が高い。