交通取り締まり、いくら厳しくしても違反が減らないワケ 「年間500万枚」の切符は意義あるのか

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交通違反の取り締まりによって、警察は年間500万枚以上の切符を切っている。この「取り締まり」がドライバーの心に、そして行動にどう影響するのかを、心理学の知見を踏まえて検討する。

環境や状況に行動を適応

取り締まりのイメージ(画像:写真AC)
取り締まりのイメージ(画像:写真AC)

 アメリカの心理学者バラス・スキナーは、箱の内側に、レバーを操作すると餌が出てくる仕掛けをした「スキナー箱」という箱を用意し、中にネズミを入れた。ネズミははじめ箱の中をウロウロしているが、やがて偶然体がレバーに触れ、餌を手に入れる。何度か繰り返すうちにレバーと餌の関係に気付き、ひたすらレバーを動かすようになった。偶然の行動に対して「うれしいこと」があったので、行動適応が起こったのだ。

 これはネズミの実験だが、考えてみれば人間も同じようなことをしている。例えば閉店間際のスーパーに寄ってみたら、お総菜に割引シールがたくさん貼ってあって得をした、という体験をすれば、次の日もスーパーに閉店間際に行ってみる。このようにほとんどの動物は、自分の行動に対する結果に応じて、環境や状況に行動を適応させているのだ。

 スキナーはこの行動適応を「オペラント条件づけ」と名付けた。オペラント条件づけはその後もさまざまなパターンで実験が行われた。行動適応は、餌やスーパーの値引きシールのように「うれしいこと」だけではなく「嫌なこと」でも起きる。また、うれしいことや嫌なことが「起きる」場合だけではなく、「起きない」場合にも、それまでに蓄積された適応行動が元に戻ったり、本能的に快適な行動に変わったりすることがある。適応行動は増えることも減ることもある。これらをまとめると次のように整理できる。

(1)「行動」+「うれしいことが起きる」→「行動が増える」
(2)「行動」+「嫌なことが起きる」→「行動が減る」
(3)「行動」+「うれしいことが起きない」→「行動が減る」
(4)「行動」+「嫌なことが起きない」→「行動が増える(ただし元々やりたい行動の場合)」

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