秘境路線「只見線」が11年ぶりの全線復旧 活性化にはオープンアクセス採用が必要だ

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絶景を楽しめる“秘境路線”としても知られる只見線が全線復旧した。その活性化策を提案する。

観光や通学利用に活路

只見線に導入された気動車キハE120(画像:堀内重人)
只見線に導入された気動車キハE120(画像:堀内重人)

 只見線を復旧させた理由としては、会津地方が豪雪地帯であることが影響する。住民にとっては、只見町と新潟県魚沼市間の国道252号が通行止めとなった場合、只見線が代替機関であり、かつ生命線となる。只見線の輸送密度は、国鉄再建法が成立した1980年度も2000人を下回っていたが、代替道路が未整備であったため、特定地方交通線とはならず、廃止を免れた経緯がある。それゆえ危機管理上の観点から、只見線の復旧が適切と判断された。

 また復旧後は、当該区間を含む只見線全線が、輸送密度が低くて厳しい経営状況であることを福島県も理解していた。そこでJR東日本と共に、利用促進活動を行うことでも合意した。

 2021年11月30日には、全線開通の目標時期を2022年秋ごろとし、2022年5月18日に福島県とJR東日本仙台支社は、同年10月1日に只見線全線で運転を再開すると発表した。福島県は、同年8月1日に生活環境部の出先機関である「只見線管理事務所」を、会津若松駅構内に設置した。只見線の利活用促進と安定的な維持管理に必要な体制づくりが目的である。

 2022年10月1日に只見線は、11年ぶりに全線で運転を再開した。

 只見線は、会津若松~小出間で135.2kmと長大なローカル線であるから、かつては急行「奥只見」が運転されていた。車両はキハ58の2両編成による運転であったが、2基のエンジンは非力で、最高運転速度が65km/hと低く、25‰(パーミル)の急勾配では30km/h程度しか出せず、急行列車であっても、表定速度が37km/h程度と遅かった。

 しかし、最近導入された気動車は、車体は軽量であるが大出力のエンジンを搭載しており、25‰の急勾配区間でも65km/h程度まで出すことが可能である。また加速性能が向上したこともあり、現在の普通列車であっても、かつての急行「奥只見」並みの所要時間で、会津若松~小出間を結ぶ。

 只見線の県境付近は人口密度が低く、利用者数も極端に少なくなることは事実だが、只見線は豊かな自然など、観光資源が豊富であるし、会津若松~会津坂下間は、通勤通学路線として活路が見いだせる。

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