信号待ちなし、事故減少 メリット多い「ラウンドアバウト」、なぜか日本で広がらないワケ

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「ラウンドアバウト」、あるいは「環状交差点」と呼ばれる交差点がある。メリットが多いのに日本で浸透しないのは、なぜなのだろうか。

スペースと交通量が問題

ラウンドアバウトの夜景(画像:写真AC)
ラウンドアバウトの夜景(画像:写真AC)

 最後に挙げた「広いスペースが必要」が、日本でのラウンドアバウト導入に際して、とりわけ大きなハードルとなっている。都市部や市街地では、すでにスペースを十分に使って交差点を設けている所がほとんどだから、ラウンドアバウト用にさらにスペースを確保するのが難しく、交差点近くの家屋の立ち退きといった話が出ると、ラウンドアバウトは、たちまち遠のくわけである。

 また、「ラウンドアバウト」なる交差点とそれにまつわる交通ルールが、多くの日本人になじみがない点も、普及を妨げている一因と推察される。極端に言えば、「えたいが知れない」のである。設置すれば物珍しさや近未来的な感じで目を引きはするが、これを「日常的に運用していこう」という意識に至るほどには、ラウンドアバウトは浸透していない。「県内にほんの数カ所」にとどまっているのも、それが一因だろう。

 そんなラウンドアバウトだが、「普及の伸びしろがたっぷりある」と言うこともできる。ラウンドアバウトに関する法律が整備されてから約10年、現在はおっかなびっくり、ぽつぽつと導入されつつある段階だが、そのメリットが広く知られて、身近に感じられるようになれば、各所での導入がもっと積極的に検討されるはずである。何しろ、そのポジティブな効果のほどは、先達である諸外国が証明してくれているので、あとは設置してその恩恵を体感すればいいだけである。

 とはいえ先ほど書いたように、ラウンドアバウト設置には、スペースと交通量の問題がある。再開発を進める地域や、歩行者・車の両方が過密でない郊外の交差点において、ラウンドアバウト設置が検討されうるか……。ラウンドアバウト普及には、最初の壁となっている「えたいの知れないものへの心理的抵抗」を、官民全体で克服していけるかにかかっていると筆者は考える。