信号待ちなし、事故減少 メリット多い「ラウンドアバウト」、なぜか日本で広がらないワケ
「ラウンドアバウト」、あるいは「環状交差点」と呼ばれる交差点がある。メリットが多いのに日本で浸透しないのは、なぜなのだろうか。
全国わずか140カ所
筆者(武藤弘樹、フリーライター)がラウンドアバウトを最初に知ったのは、もう何年も前に参加した自動車関連の講習で、「最近はこんな交差点もあります」と説明を受けた時である。その目新しさに興奮し、形状も童心をくすぐるようで、ワクワクさせられたのを覚えている。
さて、筆者は一時期ルート配送のトラックドライバーをやっていて、首都圏近郊をかなりウロウロしたし、トラックドライバーの仕事を辞めた今でも、年間1万kmは走っている。しかし、実際のラウンドアバウトに出合ったことはない。
それもそのはずで、2022年3月時点で、全国にあるラウンドアバウトは、たったの140カ所である。ずばぬけて多い宮城県が25カ所で、その次に多いのが愛知県の11カ所。長野県9カ所、静岡県8カ所などが目を引くが、他の都道府県は、それぞれほんの数カ所である。東京都にも2カ所あるが、多摩市と武蔵村山市で、都心から離れた場所にある。
実は、ラウンドアバウトを設置するには必要な環境条件があり、これがラウンドアバウトのデメリット、ひいてはラウンドアバウトが普及しにくい原因にも関係している。
ではラウンドアバウトのデメリットとは何か。ざっと次の点が挙げられる。
・歩行者の道路横断経路の複雑化(一方で、分離島を経由して2段階で横断するので、歩行者は安全に渡りやすくなる効果がある)
・交通量が多いと渋滞を招き、交通事情がかえって悪化(国交省は、「1日当たりの交通量が1万台未満の交差点にラウンドアバウトを適用し得る」としている)
・歩行者の多い交差点では、歩行者を優先させるために車が停止し、渋滞が起こりやすくなる
・従来の十字路より、広いスペースが必要になる