赤字ローカル線を活性化させたければ「ハイブリッド気動車」を導入するべきだ

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JR東海が、ハイブリッド方式のHC85系気動車を2022年7月1日から特急「ひだ」で利用開始している。いったいどんな効果があるのか。

バリアフリー対応も実施

車いすのスペース(画像:堀内重人)
車いすのスペース(画像:堀内重人)

 ハイブリッド気動車が誕生したのは、大容量のバッテリーが登場したためだ。制動を掛けて停車したり、減速したりする際に発電した電気をバッテリーに蓄え、起動時などに電気で駆動するようになったのだ。

 それゆえ、車内の静かさは向上しており、乗車していても電車に乗車しているのか、気動車に乗車しているのか分からないほどである。

 両気動車に共通している点は、バリアフリー対応が実施されていることだ。キハ85系気動車がデビューした頃、バリアフリー法が施行以前の車両だったこともあり、座席の部分を1段かさ上げして、眺望を向上させられた。

 ところが、2000(平成12)年にバリアフリー法が施行されると、車内は面一にしなければならなくなり、かさ上げされた客室構造にできなくなった。結果、側窓は従来のキハ85系気動車と同等の大きさが維持され、車窓が素晴らしい高山本線の乗客ニーズを満たすように設計された。

 また、車いす利用者のスペースが設けられ、トイレも車いすに対応している。これはYC1のトイレも同様だ。

気動車の可能性

JR東海のウェブサイト(画像:JR東海)
JR東海のウェブサイト(画像:JR東海)

 JR東海は2023年3月のダイヤ改正で、ひだの全列車をHC5系気動車に置き換える旨を発表した。またそれ以前に、富山へ乗り入れるひだの一部が2022年12月1日からHC85系気動車に置き換えるなど、2023年3月のダイヤ改正に向けた準備を進めている。3月のダイヤ改正では、大阪へ乗り入れるひだにもHC85系気動車が投入されるため、性能面でも問題がないといえる。

 事実、筆者(堀内重人、運輸評論家)は、ひだ1号が登場して間もない2022年7月5日、名古屋から高山まで乗車したが、性能面に関してゆとりを感じた。名古屋発車後、東海道本線で先行する普通電車が遅延して、岐阜を4分遅れて発車したが、終点の高山には定刻通りに到着した。

 3月のダイヤ改正で、ひだ1号の所要時間は変わらないものの、高山本線内で需要を喚起するため、かつての急行のりくら並みの停車駅増加になるが所要時間は全く変わらない。停車駅が同じひだはスピードアップが実現する。座席部分のかさ上げが無くなり、曲線通過時の乗り心地も向上するため、曲線の通過速度を向上させたといえる。

 JR九州も老朽化した気動車が多数あることから、将来的には非電化区間にYC1を投入する計画がある。そうなると、JR九州で運転される185系気動車を使った特急「ゆふ」「あそ」なども、ハイブリッド方式の新型気動車に置き変わる可能性が高い。

 185系気動車は国鉄末期に四国用として製造された車両で、各車に250PSのエンジンを2基搭載した液体変速機の気動車だ。しかし、走行性能や居住性などは

「急行列車並み」

で、特急用としては満足できる水準ではない。特に勾配区間で出力不足が顕著であり、夏場にはオーバーヒートなどのトラブルが発生している。

 これをハイブリッド方式の特急用気動車に置き換えれば、メンテナンスコストの大幅な削減だけでなく、走行性能も電車並みとなり、ゆふ・あそのスピードアップが実現する。

コスト削減と利用者向上の一石二鳥

JR九州のウェブサイト(画像:JR九州)
JR九州のウェブサイト(画像:JR九州)

 JR東海やJR九州以外に、ハイブリッド気動車が導入される可能性が高い事業者はJR西日本だ。JR西日本は、不採算なローカル線を多数抱えており、存続と活性化が課題となっている。

 JR西日本の主力ローカル線は40系気動車で、国鉄時代に製造された車両だ。そのため、車体の老朽化以外に性能面での陳腐化も進んでいる。そこでハイブリッド方式の試作車が製造され、試験が実施されている。JR西日本の特急用の189系気動車は液体式だが、製造から15年程度のため老朽化などは見られず、ハイブリッド気動車は一般用となる。

 それ以外にJR四国も該当する。なぜなら、国鉄末期に導入された気動車を多く抱えているからだ。ハイブリッド気動車は前述のとおり、液体変速機や推進軸、トルクコンバーターが不要になりメンテナンスコストが低減できることに加えて、モーターや制御器も既存電車と共通化できる。その結果、電車の運転士の免許でハイブリッド気動車の運転が可能となるため、乗務員の養成コストが低減される。

 乗客にすれば、発車時は電気で駆動するため、車内が静かになるだけでなく、加減速性能や登坂性能の向上によるスピードアップが実現するため、サービス向上と感じる。列車のスピードアップは、鉄道事業者にとって少ない車両で列車本数が維持できる上、対向する輸送手段に対する魅力向上も加わり、コスト削減と利用者向上の一石二鳥なのだ。

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