自動車産業「円安 = もうかる」の時代は終わったのか ウクライナ侵攻、輸送船不足、原材料高騰に左右される業界の悲哀
2022年10月、1ドルが151円付近まで値上がりして約32年ぶりの円安水準を更新した。一時、円高に戻したものの、いまだ円安基調が続いている。
ことの発端はウクライナ侵攻

円安のメリットを考えれば、自動車メーカーは大量に自動車の生産を進めたいところだが、足かせになっているのが2022年2月頃に発生したロシアのウクライナ侵攻だ。
ウクライナは、半導体の製造に必要な希少ガス(ネオンやパラジウムなど)の主要産出国で有名だ。ロシアの侵攻で希少ガスの供給にストップがかかり、世界的に半導体不足となっている。その影響を受けている業界のひとつが自動車産業で、自動車の製造にブレーキをかけている状態になっているのだ。半導体不足は改善されつつあるものの、思うように生産数を伸ばすことができていない。
また海外から輸入する原材料やエネルギー価格が高騰しているなか、ウクライナ侵攻によって国際的に物価が上昇。歴史的円安という状況も相まって、輸入にかかるコストは増えていく一方だ。
前述したとおり、日産自動車は何とか増益を見込める状況だが、トヨタが11月に発表した中間決算によれば、純利益は原材料価格の高騰によって2年ぶりの減益になった。売上高は円安の後押しもあり、前年比約14%増だったが、純利益はマイナスになっている。自動車メーカーにとって厳しい状況が続いている。
高騰によるダメージは製造だけでなく、自動車を海外に輸出する専用船にも降りかかっている。用船料急騰に加え、世界的に輸送船が不足しているのもあり、増産を目指す自動車メーカーは予定通りに輸出できない状況になっているのだ。事業の持続に足止めがかかっているため、円安だともうかるというメリットを生かし切れていないのが現状である。