免許も練習もいらない? グッドデザイン金賞のホンダ「UNI-ONE」をご存じか
計算されたバランス制御技術

重心移動によって稼働するモビリティとして、「セグウェイ」を思い浮かべる人も多いかもしれない。しかしセグウェイは公道での利用禁止や上り坂・下り坂での危険を伴うなど、安全への配慮が大きな問題となっている。重心移動によるコントロールの難しさは、セグウェイを体験したことのある人であればご存じだろう。
しかし、ホンダは「人協調バランス制御技術」と、独自の車輪機構である「Honda Omni Traction Drive System」(HOTドライブシステム)を採用し、高い操作安定性を実現した。
人協調バランス制御技術では、搭乗者の“歩行する時のような自然な姿勢の動き”を姿勢センサーにより検知し、搭乗者が「その場にとどまっていたい」のか、「どの方向にどのような速度で動きたい」のかを推定してくれる。その推定結果をもとに、倒れすぎないように車輪を制御し、自然な挙動を実現させた。
さらに歩行感覚を実現させる移動機構として、ホンダ独自の車輪機構も搭載されている。HOTドライブシステムを左右2基搭載し、協調制御させることによって、従来の電動車いすのように前後左右の動きだけでなく全方位へのスムーズな移動が可能だ。姿勢のわずかな挙動によって意図通りに移動が可能なので、まさに「練習いらず」な仕組みになっているといえるだろう。
モビリティの概念を変える可能性

UNI-ONEは、仕事やアミューズメント・レジャーなどでの活用を目指して開発されている。そのため、地面の凹凸や搭乗者の姿勢のズレが原因で機体が予想外の動きをしないように、綿密な研究と実験が繰り返されてきた。
万一の際に可能な限り転倒を防ぐメカトロニクス技術により、何らかのエラーが発生した場合には速やかに座面下降し、ジョイスティックの移動へと切り替わる仕様になっている。健康な人も、歩行が不自由な人も、大人でも子どもでも利用できるようにという開発者の心遣いからだろう。
安全への配慮や機能性の高さは、「2022年度グッドデザイン賞」の審査において大いに評価され、
「免許も練習もいらないという概念は、モビリティそのもの、大げさにいえば人類の移動の概念を大きく更新するかもしれない」
と称された。
「乗る人にも、一緒に歩く人にとっても、違和感やストレスがない存在感」
「自分の体が拡張したかのような、移動の本質的な楽しさを実現」
という画期的な発明は、今後の電動モビリティにも大きな影響を与えていくことが予想される。