財政難の京都市交通局 再建には「宿泊税」活用が一番なワケ

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財政難の京都市・京都市交通局。それを救う手段はあるのか。

宿泊税増税による再生策

20系(画像:堀内重人)
20系(画像:堀内重人)

 ただ、近年、省エネの進んだ新車両導入は明るい話題といえるだろう。新車両は、ランニングコストを下げるだけでなく、イメージアップによる利用者増が期待できるからだ。そして、これらの導入や京都市・京都市交通局の財政再建に活用すべきなのが「宿泊税」なのだ。

 次の六つの自治体は、宿泊税を既に取り入れている。

・東京都:2002年
・大阪府:2017年
・京都市:2018年
・金沢市:2019年
・倶知安町:2019年
・福岡県:2020年

 宿泊税は、宿泊者ひとりが1泊する度に徴収される。多くの都市では1泊につき100~500円で設定されており、北海道の倶知安町のみ宿泊料金の2%となっている。福岡市では、今後必要となる

・九州のゲートウェイ都市の機能強化
・大型MICEなどの集客拡大への対応
・観光産業や市民生活へ着目した取り組み

の費用に充当するとしている。MICEとは、企業などの会議(Meeting)、企業などの行う報奨・研修旅行(Incentive Travel)、国際機関などが行う国際会議 (Convention)、展示会やイベント(Exhibition/Event)の頭文字を使った造語だ。福岡市の宿泊税は年間約18.2億円が見込まれている。

 京都市の場合、2018年10月から宿泊税の徴収が始まった。宿泊税の税率は、次のようになっている。

・(宿泊料金が)2万円未満:200円
・2万円以上5万円未満:500円
・5万円以上:1000円

 京都市が宿泊税を導入したのは、2016年3月に策定した「はばたけ未来へ!京プラン」実施計画の第2ステージで、

「持続可能かつ機動的で、特別の財源に依存しない、景気変動などにも耐え得る足腰の強い財政の確立を図っていく」

ことを定めたことに起因する。

 その上で創設を提案するとの答申が取りまとめられ、2017年8月に検討委員会から京都市に答申が提出された。検討委員会からの答申内容を踏まえ、京都市は具体的な制度設計を行い、2017年9月、京都市宿泊税条例案を提案。審議の結果、同年11月2日に議決した。

 宿泊税の納税義務者は、

・ホテル
・旅館
・簡易宿所

などのほか、違法民泊などへの宿泊者も含めた、全ての宿泊者とした。ただし、学校教育法第1条に規定する学校(大学を除く)の児童、生徒または学生で、当該学校が主催する修学旅行、その他学校行事に参加している人や引率者には宿泊税は課されない。

 京都は国際的な観光都市であると同時に、大学が多くある学術都市でもあることから、学会が多く開催されている。京都市交通局の経営状況や京都市の財政事情が厳しく、職員の給料カットが難しい上、運賃値上げは利用者の減少を招くため、筆者は宿泊税を上げて、車両更新や欠損補助の財源を確保する必要があると考えている。

 筆者の考える京都市の宿泊税は、次のとおりだ。

・(宿泊料金が)5000円以下:200円
・5000円以上1万円以下:300円
・1万円から2万円未満:500円
・2万円以上3万円:1000円
・3万円以上5万円:1500円
・5万円以上:2000円

 そのほか、小中高校の修学旅行に関しては生徒や引率者も免税となっているが、生徒や引率者もひとり1泊につき、200円を負担するようにするべきだ。修学旅行生に課税しても、修学旅行先を他の地域へ変更することはないだろう。

 宿泊税の増税で、まずは京都市交通局の車両が更新され、それによる利用者の増加で、経営が改善されることを目指す必要がある。この2~3年で地下鉄車両の大量取り換えを迎えるが、それが一段落すれば、京都市の債務の返済などにも宿泊税を活用するべきだ。

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