JR四国の運賃値上げ、住民の反応なぜ鈍い? 「路線残したい。でも乗らないよ」がホンネなのか
なぜ、四国の人たちは赤字ローカル線に無関心なのだろうか。
共有されないJR四国の危機感
全国で旅客運送をするJR6社のうち、JR四国は最も厳しい経営状態に追い込まれている。政令指定都市がない地域で急激な人口減少が続くところへコロナ禍が追い打ちをかけ、2020年度は全路線が赤字に転落した。2021年度は221億円の営業損失を出している。
国交省の有識者会議は、JR各社の路線で見直し協議の基準となる輸送密度(1日1km当たりの平均旅客輸送人員数)を1000人未満としている。JR四国では2021年度で
・向井原~伊予大洲間(予讃線)
・須崎~窪川間(土讃線)
・阿南~牟岐間(牟岐線)
・牟岐~阿波海南間(同)
・北宇和島~若井間(予土線)
の五つが該当する。
5区間の輸送密度は、JR四国発足から間もない1989年度に比べ、「3分の2」から
「4分の1」
まで減っている。まさに公共交通が危機的状況に陥っているわけだが、徳島県徳島市の徳島駅前で通行人に話を聞くと、危機感は共有されていなかった。
買い物をしていた徳島県鳴門市の男性(85歳)は「通学の高校生のために残してあげてほしいが、私はどこへ行くのも車だから関係ない」。学校帰りの徳島市の女子高校生(16歳)は「自転車通学なので、列車は乗らない」とそれほど気にしていない口ぶりだった。
「鉄道は残したいが、乗らない」
という声は四国に限った話ではない。野村総合研究所が2月に実施したJR東日本、西日本のローカル線沿線住民約1万人を対象とするアンケートでは、7割が「今の公共交通を維持していくべき」と答えながら、月に1日以上鉄道を利用している人が
「1割強」
しかいなかった。