トヨタが「富士ミュージアム」を新設 収益は度外視、むしろ負担? いったいなぜなのか

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「富士モータースポーツミュージアム」が静岡県内にオープンした。収益を伴わない文化事業に、自動車メーカーが取り組む意義についてあらためて考える。

メーカーにとっての博物館運営とは

富士モータースポーツミュージアムの展示(画像:富士モータースポーツミュージアム)
富士モータースポーツミュージアムの展示(画像:富士モータースポーツミュージアム)

 自動車メーカーにとって、そのビジネスのメインは言うまでもなく自動車の開発と製造である。

 これらの本業において上げた収益に対して、株主は評価としての投資を行う。そして会社は株主には配当を還元し、労働者に報酬を支払う。さらに納税を通じて社会貢献を行うわけだが、あらゆる企業にとって無視することができないのが収益を伴わない文化事業である。

 自動車メーカーにとって博物館の建設とその運営は、自社の歴史を後年に正しく伝えるという意味ではパブリックリレーションを目的とした収益事業と言えなくもない一方で、実際に建設と運営に掛かる費用に対して入場料やイベントなどでの収益は微々たるものであり、完全な文化事業であると言って差し支えない。

 世界的に見て、こうした文化事業としての博物館を所有している自動車メーカーは多い。

 それらの中でも特に有名なのは何といってもアメリカのヘンリー・フォード・ミュージアムであり、その収蔵展示物は自社の製品だけにとどまらず、交通産業の歴史全般に及ぶという極めてアカデミックな施設となっている。

 わが国の場合、こうしたアカデミックな博物館に互することができる民間施設は長らく不毛な状況が続いていたが、それも、トヨタ博物館と同じくトヨタが運営するトヨタ産業技術記念館の完成で大きく前進することとなった。

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