「熊本空港アクセス鉄道」有力ルート浮上も 黒字転換は30年以上ムリ! TSMC上陸に揺れる現地に、地元紙も思わず苦言の現実
肥後大津ルート以外の可能性

県は、肥後大津ルートの費用便益比が30年間で「1.03」と最も高いことや(三里木ルートは1.01、原水ルートは0.72)、南阿蘇鉄道が肥後大津駅への乗り入れに向けて調整していることから優位性があると見ている。ただ、費用便益比は一定期間の総便益額を総費用で割った値であり、あくまで試算の扱いだ。
将来性を考えると、肥後大津ルート以外の可能性もないわけではない。とりわけ注目されているのが、費用便益比の最も低い原水ルートだ。そのわけは、世界的半導体メーカー・台湾積体電路製造(TSMC)の菊陽町への進出が決まっているからだ。
同社は、2024年から菊陽町内第二原水工業団地で新工場の稼働を予定。9月7日に、肥後銀行などを傘下に置く九州フィナンシャルグループが示した試算によると、2024年から2年間の経済効果は約1兆8000万円、2022年から2031年までの10年間は
「約4兆2900億円」
に達すると見込まれている。
TSMCの新工場は雇用効果だけで約7500人。これに関連して、約80社が県内に拠点、あるいは新工場を建設することが想定されており、消費や住宅などの波及効果は絶大だ。熊本県はTSMC進出をにらんで半導体産業のPRを強化するなど、県内経済はいま半導体産業の発展による効果に大いに期待を膨らませている。
また、これまで熊本県が計画の本命として動いていたのは三里木ルートであったことも、議論を白熱させている。
この計画によると、三里木駅から分岐した路線は南進し、熊本県民総合運動公園(熊本市東区)付近に建設される中間駅を経た上で、空港にアクセスすることが想定されている。路線が計画されているエリアは熊本市に隣接するものの、市街地には直接バスで向かうか、豊肥本線の駅まで行って乗り換えるか、という鉄道空白地帯だ。それゆえ、地域住民からは期待を裏切られたことに対して不満の声もあがっている。