飛行機どこいった? ANA発のスタートアップ企業がなぜか「移動しない」サービスを提供しているワケ

キーワード :
, ,
モビリティ分野のスタートアップ企業トップにインタビューするシリーズ企画。第3回目は、ANA初のスタートアップ企業として、ロボティクス、AI、VR、AR、通信などの技術を結集して、社会課題解決に挑戦しているavatarinの深堀昂代表取締役CEO。

宇宙から家庭まで 幅広いアプローチ

国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の実験。遠隔コミュニケーション型space avatarイメージ(画像:avatarin)
国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」の実験。遠隔コミュニケーション型space avatarイメージ(画像:avatarin)

 avatarinの手がけるサービスの多くは実証実験の段階であり、大きな収益を得る段階には至っていない。しかし、コロナ禍で1000人以上の利用データを取り、たしかな手ごたえを感じている。

 例えば、コロナ禍で出掛けることが難しいなかでも、各地の水族館や美術館、イベント等へ自分の意識を持ったnewmeを送り、現地をリアルタイムで、かつ臨場感とともに楽しむことができる。あるいは、病気やけがで動くことが困難な人がアバターを使えば出掛けることが可能になる。

 また、宇宙へも目を向け、JAXAとの事業コンセプト共創活動も行っている。2020年11月には国際宇宙ステーションの日本実験棟「きぼう」に設置された「space avatar」を一般の人がJAXAの施設外から操作する実証実験に世界で初めて成功。現在も沿革宇宙旅行や宇宙遠隔体験などの事業について実証を続けている。2022年8月末にもJAXA種子島宇宙センター宇宙科学技術館でnewmeを動かす予定だ。

 一方で、日常に即した利用にも注力している。例えば「アバターショッピング」。百貨店のコンシェルジュ(アバターコンシェルジュ)としてアバターが活躍したこともある。離れて暮らす家族のなかに不在者のアバターを置けば、まるで一緒に暮らしているような気分になれる。実際にアバターと暮らした人は、名前で呼ぶようになるケースが多いという。また、別れに際しては涙することもあるそうだ。また、シャッター街化が目立つ地方の商店街の活性化や、高齢独居者の見守りにも役立つ可能性を探っている。

 実に多様なケースでアバターの利用ができることがわかる。深堀によれば、「さまざまなケースをぜんぶ試しつつ、本題であるモビリティにタックルしている感じ」とのこと。
 これまで実際に使われたケースでは、2020年に新型コロナウイルス感染者が発生したクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号の問診に医師が使ったケースがある。コロナ禍ではほかにも、近づくことや旅が難しい葬儀場で出棺までアバターが寄り添ったこともある。これまでのロボットは特定の人しか使うことがなかったが、普通の人が気軽に使える、そんな時代を深堀は見据えている。いわば、飛行機程度の間隔でアバターが身近になる日がすぐに来るだろう。

 例えばウーバーのロボット版のような、プラットホームにアクセスすれば。そのとき使用可能なロボットがわかり、そのなかで自分の用途に合ったものを選んでいく。avatarinはそうしたプラットホームになることも目指している。

全てのコメントを見る