飛行機どこいった? ANA発のスタートアップ企業がなぜか「移動しない」サービスを提供しているワケ
社会課題解決とともにある人生
深堀は2008(平成20)年、ANAに入社した。もともと飛行機が好きで、なかでも「トランスポーテーション系」が重要だと思っていた。入社して知ったことは、エアラインのユーザー数は世界人口の6%くらいしかいないことだ。ANAは「世界の人に夢と感動を届けます」というが、エアラインという移動手段は地球規模で考えると限られたものだということに衝撃を受けた。エアラインという当たり前にさえ思っていた移動手段は、世界中で認識されているわけではないのだ。
以後、移動をもっと変えようと深堀はさまざまなアイデアを巡らせる。そして意識を転送するモビリティをつくり、2016年のXPRIZEでグランプリ獲得につなげた。その背景には、深堀が少年時代から社会課題を強く意識していたことがある。
深堀の父は海外転勤が多く、深堀も幼少期はアメリカで過ごしていた。航空宇宙局(NASA)に見学に行ったこともあり、飛行機や宇宙に強く興味を持って育った。同じくらい好んだのが社会課題解決につながる活動を行うことだった。
日本に帰国して群馬県高崎市の小学校に通っていたとき、飲んだ後の牛乳パックからトイレットペーパーをつくったら、地元のメディアに取り上げられた。こうした挑戦と成功体験積み重ねて、学生時代には非政府組織(NGO)でも活動した。モビリティ分野においても、社会課題を解決する存在でありたいという気持ちは、常にある。
2016年のXPRIZEがきっかけで取締役COOである梶谷ケビンとともに活動するようになって、avatarinの今がある。ケビンはもともとボーイングのエンジニアで、日本に移住しており、10年以上家族と離れて暮らしている。newmeのイメージビデオに登場する少年は、彼の愛息だ。また、執行役員CTO(最高技術責任者)のフェルナンド・チャリスはもともと東京大学の研究者だった。このふたりとのタッグもまた、avatarinを支えるひとつの要素となっている。
「イノベーションゼロか1」だと深堀は考えている。一方「ケビンは1か10」の人であり、チャリスはバランサーだ。深堀は何かをするとき、必ず誰かをさそう。うまく作用している。