赤字垂れ流しの北九州市営「若戸渡船」に廃止議論が一向に起きないワケ

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北九州市が運営する若戸渡船。すぐ近くに若戸大橋があるにもかかわらず、なぜ維持されているのか。

廃止されない公共交通機関

2011年1月から定期運航が開始された「第十八わかと丸」(画像:北九州市)
2011年1月から定期運航が開始された「第十八わかと丸」(画像:北九州市)

 赤字ローカル線の存廃問題が今、世間を揺るがせている。需要があるにもかかわらず、現実は赤字だ。しかし利用者が要望する限り、廃止論は出てこない。福岡県北九州市が運営する若戸渡船も、そのような状況で維持されている公共交通機関だ。航路は若戸航路・小倉航路のふたつで、若戸航路は洞海湾を挟む市内の若松と戸畑を、小倉航路は離島の馬島・藍島を結んでいる。

 利用者数はどちらの航路も減少している。北九州市が公開している資料によると、年間利用者数は2020年時点で

・若戸航路:3万6800人
・小倉航路:4万5037人

となっている。

 若戸航路の運賃は大人100円、小倉航路は小倉~馬島間が420円、小倉~藍島間が600円だ。これらの維持に、北九州市は2020年に3億8290万円の予算を割いている。市が予算を割かなければ、諸費用を賄うことはできない。

 ここで注目したいのは若戸航路である。小倉航路が離島と本土を結ぶ路線なのに対し、若戸航路は洞海湾で隔てられたふたつの地区を結んでいる。船の横には湾をまたぐ若戸大橋が架橋され、路線バスも走っている。

 通常、架橋されれば渡船は廃止される――。

 かつて長崎県平戸市では、市の中心部がある平戸島と本土を隔てる平戸瀬戸を渡船が運航していた。この風景も、1977(昭和52)年に平戸大橋が架橋されるとともに消滅した。広島県呉市では、本土と倉橋島を隔てる音頭瀬戸に架橋された後も、民営の音頭渡船が続いていたが、コロナ禍の影響もあり、2021年10月に廃止された。それでも、これまで若戸渡船の廃止が議論になったことはほとんどない。