東武野田線5両編成化 2024年度開始も「混雑率上昇」「積み残し発生」は本当に大丈夫なのか
5両編成の背景とは

野田線通勤形電車の5両編成化の背景にあるのは、新型コロナウイルスの影響による利用客の減少だ。
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国土交通省が毎年公表する「最混雑区間における混雑率」の2021年度版は入稿時点、まだ発表されていないが、東武としては
「利用客が戻っていない」
という認識のようだ。
野田線の最混雑区間は上り北大宮~大宮間、下り初石~流山おおたかの森間および、新船橋~船橋間で、2019年度の混雑率はすべて120%超だった。ところが、2020年度の北大宮~大宮間は33%減の91%、初石~流山おおたかの森間は48%減の84%、新船橋~船橋間は38%減の101%と落ち込んだ。
2020年度の乗車人員を60000系5両編成分(定員704人)に仮定して計算すると、北大宮~大宮間は107%、初石~流山おおたかの森間は99%、新船橋~船橋間は118%となり、混雑率が少々回復する。ただ、少子高齢化が進んでおり、2030年代に入ると混雑率が右肩下がりになることも考えられる。
特急3両編成で足りることも影響か

野田線の通勤形電車5両編成化につながった、もうひとつの要因として考えられるのは、特急「アーバンパークライナー」だ。
この列車は500系リバティを使用したホームライナー的な特急で、平日の夜間に運転される。伊勢崎線浅草始発の列車は大宮行き(1~3号車)と柏行き(4~6号車)を併結した6両編成で運転され、せんげん台から特急料金不要、春日部で大宮行きと柏行きを切り離し、3両編成でそれぞれの目的地へ向かう。
また、野田線春日部~運河間は単線で、なおかつ地上設備の関係で通過運転ができない。このため、急行と同様に“各駅停車”という役割もあることから、野田線大宮始発の下り列車は春日部、柏始発の上り列車は運河から特急料金不要となる。もちろん、両駅からの乗客も多い。
実際に乗ってみたところ、乗車券のみで利用できる起点の駅(下りは春日部、上りは運河)は盛況するが、止まるごとに乗客が減ってゆく。新たに乗ってくる乗客も少なく、2人掛けのリクライニングシートをひとり占めできるほど。乗客の側としては、乗車券のみでスマートフォンやパソコンの充電、飲食が容易にできるなど、“ゆとり列車”として重宝する。
ただ、特急券不要にもかかわらず、終点まで乗客全員が着席できるイコール3両編成で足りるのは喜ばしいことではない。コロナ禍でこの状況が長く続いた以上、通勤形電車の5両編成化はやむを得ない。