コロナ禍の「出勤者7割削減」要請、結局効果はあったのか? 東大4500人調査で判明した現実との「大きなひずみ」とは

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コロナ禍の自粛要請で、人びとによる実際の移動は抑えられていたのか。データから読み解く。

午前中に職場にいる割合が高い30代

各時間帯で「職場」にいる人の割合(年齢層別・2021年)(画像:是永論)
各時間帯で「職場」にいる人の割合(年齢層別・2021年)(画像:是永論)

 以上で見た通勤による移動時間の差について考えるために、ここで同じく就労者について、2021年のデータから各時間帯に職場にいる率(滞在率)を年齢層別に比較したこの図を見ることにしたい。なお、20代と60代は就労者の割合が他の年齢層よりもやや少ないため、比較対象からは除くことにした。

 図からは、年齢層それぞれについて、職場にいる時間帯の特徴が見られた。

 まず、30代は前図でも確かめられたように午前中に職場にいる割合が高く、また21時台までの夜間に職場にいる割合も一定に見られている。40代は午前と午後ともに滞在率が相対的に低いが、夜間に滞在する割合も一定に見られる。50代は7時台が相対的に高く、また、午後の滞在率が一定して高くなっている。

 前図で50代の移動率が6時台と13時台に高いことを考え合わせると、早朝や午後から出勤する層が一定にいたものと考えられる。

昼間の職場滞在率は6~7割

オフィスで仕事をする人たち(画像:写真AC)
オフィスで仕事をする人たち(画像:写真AC)

 以上のデータからまず確認できるのは、外出の自粛要請に対する人びとの対応は、政府の提唱したような出勤率の大幅な削減ではなかったことであり、昼間の職場滞在率は一定して6割から7割を占めていた。

 遠隔勤務の実施は、2021年の調査対象者全体の10%に満たず、逆に遠隔勤務をしていない割合は6割にのぼっていたことから、テレワークの導入が低調であったことも出勤率の高さに関連しているものと考えられる。

 しかし、交代通勤のような対応は見られたようで、各年代別の移動率や職場滞在率の違いから、30代が午前、50代が午後を中心に出勤している様子が確認された。40代の職場滞在率が全体として低くなっているのは、多くが子どもが学校に通っている年齢層で、在宅学習などの子どもの世話のために出勤数を下げざるを得ない状況にいたものと推測される。

 一方で、早朝や夜間の職場滞在も特定の年齢層でより多く見られたことから、これまでの出勤抑制策が何らかの「ひずみ」を生み出して来なかったか、反省的に検討する必要があるだろう。

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