地震・豪雨に負けない! 熊本「くま川鉄道」25年度全線再開はローカル鉄道の希望となり得るか
高額な復旧費をクリアできたワケ

流出した球磨川第四橋梁の再建を含めると、復旧費は概算で約46億円。現在は約50億円に増加すると見込まれている。
高額な費用の問題をクリアしたのが、国の定めた大規模災害の特例支援措置である。これは熊本地震の際、同じ熊本県の南阿蘇鉄道を復旧させるために定められた制度だ。
直近3期の事業収支が赤字、かつ復旧費が年間運賃収入を上回る場合、復旧費の97.5%を国が実質支援する。残りを地元自治体が負担する。
負担の条件として、復旧した鉄道施設を公的主体が保有すること、すなわち上下分離方式の導入が必要なわけだが、この制度によって、事業者に負担をかけない形で復旧できるようになった。
それでも、国土交通省が復旧支援を決定する2021年5月まで、沿線に温度差があった。鉄道の利用者数が市町村ごとに異なるため、一部の自治体では費用負担を疑問視するところもあったのだ。
復興産業は明るく、観光業は暗い現実

なかでも、沿線のあさぎり町では2020年9月の町議会で鉄道の復旧決定は拙速であるとして、バス利用などを含めた慎重な検討を求める決議案を全会一致で採択している。
この背景にあったのは、人口減少が進むなか、大規模水害でさらに産業が衰退していき、将来的に鉄道への負担が増大することへの危機感だった。筆者(昼間たかし、ルポライター)は水害後の2020年10月に現地を訪れて取材したが、確かに温度差はあった。
復興関連産業は将来が明るい。県内ではいまだ熊本地震の復旧作業が続いているものの、業者が足りないため、九州の他県からも業者が集まっていた。ビジネスホテルでは
「2年間借りたい」
という超長期滞在の客も現れ、
「向こう30年は仕事がある」
と、家を買って事務所を開設する業者もいたほどだ。
一方、従来の地場産業はあきらめムードが強かった。人吉市内では、被災した大手旅館の身売りが話題になっていた。また限られた予算のなかで、行政は大手施設を優先して観光支援しているという話も出ていた。農家は、これを機に農業をやめるところまであった。