「ロシア産天然ガス」の輸入禁止が与えた痛恨のダメージ ヨーロッパの台所事情は出口が見えないカオスな状況になっていた
ロシアとの関係を重視した政策があだに

ドイツは、これまでロシアからの天然ガスの輸入を強化すべく、バルト海経由でロシアとドイツを直接結ぶパイプラインの建設を進めていた。ちなみに、「Nordstream(ノルドストリーム)1」は、2011年に稼働を既に開始している。2021年には「Nordstream2」が完成したものの、ロシアのウクライナ侵攻を受けていまだ稼働していない。
Nordstream2は、建設当時から物議を醸し出していた。アメリカのトランプ前大統領は、安全保障を理由にNordstream2の建設に反対し、かつアメリカからLNGを輸入するように働きかけていた。その上、建設に関わる会社に対し制裁を課していたのである。なお、バイデン大統領に変わってからも、制裁は続いている。
政治的な懸念を表明していたのは、アメリカだけではない。ポーランドやバルト諸国は、高まるロシア産エネルギーへの依存度に危惧をあらわにしていた。加えて、ポーランドやウクライナなど、陸路によるロシアからヨーロッパへのガスパイプラインを有する国は、天然ガス輸送収入が減少することも問題視していたのである。Nordstream2の稼働によるウクライナの損失は、年間20億ユーロ(約2700億円)と見込まれていた。
しかしながら、現時点ではトランプ前大統領の警告をはじめ、ポーランドやバルト諸国が抱く懸念の正しさが証明された上に、ドイツのこれまでの親ロシア政策も失敗したと言わざるをえない。
ヨーロッパのLNGターミナルは過剰気味

ドイツはLNGターミナルの建設に際し、約25億ユーロ(約3400億円)の資金を投入して、浮体式LNGターミナル4基をリースする計画である。最終的には、ロシアからの輸入量のおよそ半分である270億立方メートルの天然ガスを確保できるとしている。
とはいえ、すでにヨーロッパには37基のLNGターミナルがある。これらのうち26基が、EU加盟国のターミナルだ。
「ドイツが自前のLNGターミナルを建設しなくとも、ベルギーやオランダ、あるいはフランスのターミナルを経由して輸入すればよいのではないか」
「政府は自国のエネルギー安全保障を主張しているが、EUのパートナーを信用していないのか」
など、反対意見も散見される。
その上、非政府組織であるFood & Water Action Europeは、
「2021年1月から2022年1月半ばにおける、EUにおける全LNGターミナルの稼働率はおよそ40%にすぎなかった」
と主張している。その主張のとおりであれば、巨額の資金を投入してドイツにLNGターミナルを建設するより、まずは既存のターミナルの稼働率を上げるべきだという意見に納得がいく。
またドイツは、気候変動対策として2045年までに化石燃料の使用を段階的に廃止する目標を立てている。当然のことながら、天然ガスも化石燃料のひとつである。将来的に不要になるLNGターミナルに、お金をかけることに抵抗を感じるのは自然なことだ。