帆が超巨大! 商船三井「未来の大帆船」は二酸化炭素削減の切り札となりうるか
船の推進力は「風力」

海運の二酸化炭素(CO2)削減の切り札として、次世代型の「帆船」が姿を現そうとしている。風力を船の推進力として活用する「ウインドチャレンジャープロジェクト」を進めている海運大手の商船三井と大島造船所は2022年2月1日、大型の貨物船に搭載する伸縮可能な帆が完成したと発表した。
「ウインドチャレンジャー帆」と呼ばれる硬翼帆式風力推進装置(風力エネルギーを伸縮可能な硬翼帆によって推進力に変換して利用する装置)は、東北電力の火力発電所向け石炭輸送に投入される9万9000重量t型のばら積み船(バルカー)に設置され、10月上旬から実際の航路で運航を始める予定となっている。
さらに商船三井は帆走中に船内で水素を作り、その水素を燃料として活用するゼロエミッション船の開発計画「ウインドハンタープロジェクト」にも取り組んでいる。ヨット「ウインズ丸」を使用して2021年11月から行った実証実験では、実際に風と水素で走ることに成功しており、最終的には大型の貨物船に実装することを目指している。
国際海運にのしかかる温暖化問題

貿易の90%を支えている国際海運は、年間約8億tものCO2を排出している。世界全体で占める割合は約2.2%とドイツ1国分の排出量に匹敵。国際海事機関(IMO)では、2050年までに温室効果ガス(GHG)総排出量を2008年比で50%以上削減することを掲げる、「GHG削減戦略」を2018年4月に採択している。船会社や造船所は省エネ効率を高めた環境に優しい船舶や、水素やアンモニアといったカーボンフリー燃料エンジンの開発を進めている。
こうした中、自然エネルギーである風力を推進力とするため、GHGを全く排出せず、環境への影響が少ない「帆船」が再評価されており、マストのような形状の翼帆(ウイングセール)や、マグヌス効果と呼ばれる物理現象を推進力に利用する円筒帆(ローターセール)などの本格的な実装に向けた動きが活発化している。
商船三井は2021年6月、「商船三井グループ環境ビジョン2.1」を策定。2020年代中にGHGを実質的に排出しないネット・ゼロエミッション外航船の運航を開始し、グループ全体でネット・ゼロエミッションを2050年までに達成することを掲げた。
まずは2021年から2023年までの3年間で低・脱炭素分野に2050億円の投資を行い、このうちウインドチャレンジャープロジェクトを含む環境に対応する船舶の導入に910億円を投資するとしている。