無免許運転の摘発者は「年間2万人」 繰り返される蛮行、現行の刑罰と司法判断は軽すぎる?

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毎年、無免許運転で年間に約2万人が摘発されている。現行の刑罰と司法判断は軽すぎるのか。

無免許でも「危険運転ではない」ケースもある

ハンドルを握る手(画像:写真AC)
ハンドルを握る手(画像:写真AC)

 ところで無免許運転の人たちだが、困ったことに重大事故では免許の有無と同時に「運転技術の有無」も加味される。つまり不思議な話だが、

「免許は持っていなくても運転技術はあるので危険運転ではない」

という司法判断が下されるケースが多い。

 2012年の京都亀岡集団登校事故(亀岡暴走事故とも)は無免許の少年(当時)が集団登校をする小学生の列に突っ込んで3人死亡、7人重軽傷という痛ましい事件だったが、この少年は無免許でも「運転技術がある」として危険運転致死傷罪の適用を免れている。

 義憤はもちろん、免許制度の否定に通じるような気がするが、司法判断は「無免許でも運転技術があれば危険運転致死傷罪ではない」だった。

 元バイク雑誌の編集者は「あくまで過去の話」として、

「昔の暴走族は最初から免許なんか取らないって人たちもいました。暴走族をすればどうせ免許は取り上げられる。だったら最初から取らない。それに免許がなければ排気量無制限で乗れる。本当にこういう人たちがいたんですよ」

と語ってくれた。

 もちろん人それぞれだが、筆者(日野百草、ノンフィクション作家)もかつてそうした「最初から免許なんか取らずに暴走行為」という人と遭遇している。重ねるが年間約2万人も無免許運転で摘発されていることを考えれば、そんな人たちがいても不思議ではない。それにしても、なぜ無免許運転がなくならないのか。「うっかり失効」もあるだろうが、多くは確信犯だろう。

「罪が軽いんですよ。3年以下の懲役なんてほとんどくらわない。せいぜい50万円以下の罰金に執行猶予です。そもそも条件違反ならともかく、免許を持ってなければ点数がいくら減らされようと関係ないですからね」

 なるほど、確かに無免許運転そのもので刑務所に入る確率は低い。冒頭で触れた無免許の女性都議会議員も懲役10か月、執行猶予3年であった。警察が確認できただけでも彼女の無免許運転は7回、その中の1件は衝突事故を起こして逃走した「当て逃げ事故」でもあった。それでも自動車運転死傷処罰法違反に関しては不起訴である。

現行の刑罰と司法判断は軽すぎる?

交通事故現場のイメージ(画像:写真AC)
交通事故現場のイメージ(画像:写真AC)

 無免許運転は亀岡のケースも含め大変な事件を引き起こす可能性が高く、公道の安全はもちろん免許制度に対する冒涜(ぼうとく)である。そのはずが実際は不起訴、略式裁判の罰金刑で済むのが現実だ。

 無免許の人身事故で過失運転致死傷罪が適用されれば「10年以下の懲役・禁錮または100万円以下の罰金」だが、免許取得者の「7年以下の懲役」とそれほどの差はない。無免許でも「運転技術はある」とされれば、危険運転致傷罪は免れることは亀岡の判例でも明らかだ。

 無免許運転の刑罰、これまでも事件と批判のたびに重刑化はなされてきたが、いまだ不十分のように思う。無免許でもそのほとんどが罰金刑どころか、人を傷つけても大半は執行猶予、無免許でも運転できれば危険運転ではない。

 現行の無免許運転に対する刑罰と司法判断ははっきり言って理不尽であり、軽すぎるのではないか。