JR東の新夜行列車「ルナ・アズール」 なぜ乗車チケットは窓口から消えたのか? 「はやぶさ」との対比で見る体験価値への転換

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「運んだ距離」から「もたらす体験の価値」へ。JR東日本が2027年度初めに投入する定員125人の新特急「ルナ・アズール」は、窓口販売のないネット限定の旅行商品だ。新幹線グリーン車(2万4180円)+αの柔軟な値付けにより、硬直した運賃制度を越えて鉄道ビジネスの稼ぎ方を変える新たな挑戦を追う。

多様な乗客が求める価値

ロゴの表記例(画像:JR東日本)
ロゴの表記例(画像:JR東日本)

 ルナ・アズールを支える人々をひも解くと、同じ列車でも乗客が見出す価値はそれぞれ異なる。

 まずは旅先での特別な体験をSNS等で発信する層だ。エアトリ(東京都港区)が2019年に20~70代の男女1028人を対象に行った調査では、乗車目的の旅をしたことが「ある」人が27.8%、「ないけど興味がある」人が52.7%にのぼった。車両の魅力を高め新たな需要を掘り起こすアプローチには十分な背景がある。

 春から秋の夜行(品川~青森、上越・羽越本線等経由)は週2往復、12.5~15時間ほどかけて進む。下り(品川21時頃発)は途中、高崎駅での約10分のリフレッシュ停車を経て、秋田や弘前、新青森を巡り翌朝9時半頃に着く。上り(青森16時頃発~品川翌7時頃着)は首都圏の朝の通勤ラッシュを避け、旅の余韻に浸れる時間帯を選定した。

 一方で、他交通にはない心地よい空間を求める層もいる。フリーランス等の自由業にとって、車内は仕事と休息を繋ぐ移動拠点となる。ここに、日本の鉄道の定時性や居心地の良さを文化として楽しむインバウンド客が加わり、試みを支える存在となる。

 客室は最上級「ルナ・プレミアム」(1・2人用)と標準「ルナ・コンフォート」(1・2・4人用)を用意し、6号車には車いす対応個室も備える。夜行時は10両編成で全席グリーン個室となり125人を受け入れる。

 冬は草津温泉などへの足として、品川~長野原草津口間(2.5~3時間)を週6往復する昼行特急へと変わる。駅のホーム長に合わせて4・8・9号車を外した7両となるが、1部屋を大勢で使えるよう工夫し定員を150人に増やす。5種類中4種類の部屋は夜行時の定員を昼行時の半分に絞り、需要に合わせた柔軟な販売を行う。

 料金について、JR東日本は品川~青森間で東北新幹線グリーン車+α程度を想定している。東京~新青森の「はやぶさ」グリーン車通常期(2万4180円)を基準にすれば、通常個室は2万6000~2万8000円、プレミアムはグランクラス基準で3万4000~3万7000円ほどになる公算だ。

 新幹線のグリーン車は平時でも約40~50%の席が埋まり(北海道新幹線開業直後3日間実績でも50%前後)、さらに高価なグランクラスを選ぶ層も定着している。移動環境に相応の対価を払う層は確実に育っている。

 こうした層を新たな個室へ誘うマーケティングが今後の需要を牽引する。詳細な運転日やダイヤ、料金は2026年末までに発表される予定だ。

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