「愛犬と旅行に行きたい!」4000億円市場を変える“肉球経済”をご存じか

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愛犬を家族同等に迎える国内外の体験消費「肉球経済」が本格化している。国内の犬のお出かけ市場は約4000億円規模に達し、16.0%の高額消費層が全体の支出の62.2%を牽引する構造だ。移動や宿泊インフラの前提を人間中心から共生へと変えつつある、この巨大な地殻変動の実態をレポートする。

三つの変数と旅行の未来

愛犬と国内宿泊旅行イメージ(画像:写真AC)
愛犬と国内宿泊旅行イメージ(画像:写真AC)

 この先、この市場がどの方向へ進むのかは見極めにくい。ルール、技術、文化という3つの要素がそれぞれ違う速さで動いているため、一筋縄ではいかないからだ。

 まずルールの面では、公共交通や宿泊施設の受け入れ条件をどこまで柔軟に見直せるかが焦点になる。ここで注目したいのが技術の活用だ。スマートフォンアプリでペットと同乗できる車両をその場で予約できる枠組みや、センサーを使って時間や場所ごとに利用者を分ける工夫、アレルギーに配慮した空気清浄機の導入などが広がり始めている。こうした工夫によって、犬を飼っていない人と飼い主が同じ空間を無理なく分け合えるようになれば、市場の広がり方も大きく変わるだろう。

 文化の面では、ペットを家族として扱う考え方がどこまで社会に根付くかが未来を占うことになる。猫を飼う人のうち27.2%が旅行への同行を望み、9.4%はすでに同行経験があるというデータもある。犬と違って猫は、外での活動よりも落ち着いた環境や移り変わりの少ない空間を好む傾向があり、脱走を防ぐ手立てなども欠かせない。そのため必要な環境は犬とは大きく異なる。旅行業界は、ペット可という一括りの扱いから、それぞれの動物の習性に合わせた受け入れの形へと移っていく段階にある。

 こうした動きを踏まえると、「肉球経済」の本質は、移動や宿泊、買い物といった暮らしの営みのなかに、あらかじめ動物と一緒に過ごす前提を織り込んでいく流れにある。その結果、これまでの旅行が人の利便性や移動の速さを追い求めていたのに対し、これからは人と動物が同じ空間をどう共有するかが中心的な視点になっていくはずだ。

 このうねりは、制度の遅れや投資の偏りをはっきりと浮かび上がらせている。今後は、人と動物が共に過ごしやすい環境づくりにお金を投じる地域や企業と、従来のやり方にとどまる場所との差が広がっていく。その違いが、観光地としての人気や評価を左右する重要な要素になっていくだろう。

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