トヨタ、「次世代EV」開発中止は何を意味するのか? EV市場が“一枚岩”で語れなくなった根本理由

キーワード :
, ,
トヨタのレクサス次世代EV「LF-ZC」量産見直しは、EV需要が米欧中で8~47.9%とばらつく中で進む判断だ。電池価格低下やHV需要も絡み、量産時期の見極めが各社戦略の焦点となっている。

技術格差の懸念と三つの未来図

トヨタのCASE戦略(画像:トヨタ自動車)
トヨタのCASE戦略(画像:トヨタ自動車)

 今回のトヨタの判断は合理的に見える一方で、批判もある。そのひとつが技術の進み方の差である。中国市場では、欧米とは異なる速度でEVが広がっている。中国メーカーやテスラはすでに量産のデータを積み上げ、製造コストの低減とソフトの改良を速い速度で進めている。

 量産を止めることは、市場に出して経験を積み重ねる流れから離れることになり、技術の進み方に差が出る可能性がある。EVやソフトウェア定義車両(SDV)の領域では、研究開発だけでなく、実際に市場へ出して得られる反応が重要になるため、量産を行わない場合は市場への対応の速さが落ちやすい。

 例えば、無線でソフトを更新する技術であるOTA(Over The Air)がある。OTAは将来の収益につながる手段のひとつと見られているが、量産を先送りすることで実際の運用を通じた改善の機会を失う可能性がある。また、他社がEVの生産と販売を続け、その間に製品の種類を増やしていけば、後から入り込む余地が小さくなることも考えられる。

 ここでは三つの将来像を想定する。

・現状維持
・EV加速
・EV鈍化

である。「現状維持」では、EV市場は地域ごとにわかれたまま続き、トヨタはHVを収益の中心に置きながら、EVは量産の速度を抑えつつ研究開発を進める。「EV加速」では、米国・欧州・中国が同じようにEVへ向かい、中国勢を中心に価格と技術の競争が世界に広がり、電池性能とソフトが競争の中心になる。「EV鈍化」では、地域ごとの分断が続き需要も大きく伸びず、資源価格の上昇でEVの利益が下がり、ハイブリッド技術の価値が見直される。

 どの道に進むかは、各国の政策や規制、技術の進み方、とくに電池技術、そして景気動向によって変わると考えられる。どの展開になった場合でも、自動車メーカーは研究開発を続けながら、量産へ進む時期を見極める必要がある。

全てのコメントを見る