なぜ鉄道保守から「現場の勘」が消えつつあるのか? 5~10年で現場の主導権が変わる根本理由

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日立製作所が米AI企業アンソロピックと提携し、鉄道保守にAIを本格導入する動きが加速。平均1時間34分の荷待ちや人手不足、老朽化が進む現場で、予知保全と運用最適化がインフラ維持の前提を塗り替え始めている。

データ基盤への主導権移行と格差

「Takane」のウェブサイト(画像:富士通)
「Takane」のウェブサイト(画像:富士通)

 多くの組織がデータベースを一元化し、部門をまたいで情報をわかち合うことで効率を高めようとしている。鉄道の世界でも、日々の走行データや点検記録を横断的に使いこなす仕組みが、信頼を守る土台となった。集まった情報を読み解き、どう動くのが最善かを導き出す役割を、今はAIが担い始めている。

 こうした動きは、保守の主導権が現場の設備管理から、デジタル上の基盤へと移り変わっていく予兆ともとれる。これまでは鉄道会社やメーカー、保守を担う企業がそれぞれの持ち場をバラバラに管理していた。だがAIが普及した先では、情報を束ねて運用の指針を示す側が、事業の流れの真ん中に立つことになる。

 一方で、国内のAIサービスの多くが海外の技術を土台にしている点は無視できない。日立がエヌビディアの基盤を使い、富士通の「Takane」がカナダのコヒアのモデルを取り入れているように、先端技術の導入において世界的な連携は不可欠だ。これは進化を早める大きな力になるが、同時に、運用の主体性をいかに自分たちの手で守り続けるかという問いも突きつけている。

 AI導入の経済的な実りは大きい。部品交換の時期や要員配置を分析すれば、無駄を削ぎ落とした運用ができるからだ。ただし、こうした仕組みを整えるには相応の投資が要る。経営環境の厳しい地方の事業者は、投資に余裕のある大手に比べて足取りが鈍くなりがちだ。過去には導入を試みながら専門知識が足りずに外部へ頼り切りになり、費用が膨らんで撤退した事例もある。

 この状況は、安全と効率の両面で事業者間の差を広げることにつながりかねない。大手が予知保全で信頼を築く一方で、地方が事後保守に留まる格差は、路線の生き残りを左右する問題にもなり得る。こうしたなか、住友商事がJR九州や伊豆急行と進める試みのように、経営規模に合わせた柔軟な仕組みも現れ始めた。自らの立ち位置を見極め、外部に頼りすぎることなく新しい知恵を取り入れる姿勢が、これからの鉄道経営には欠かせない。

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