“脱中国”は本当に可能なのか? レアアース9割依存の現実、「ハイブリッド車」を直撃するサプライチェーンの死角とは
レアアース国産化の厳しい現実

2026年2月、南鳥島沖の水深5600mの深海底からレアアースを含む泥の採取に成功したと発表された。高市早苗首相は街頭演説で
「日本はこれから今の世代も次の世代もレアアースには困らない」
と訴え、国内外の注目を集めた。だが、その楽観論には慎重な検討が必要だ。「レアアース」という名称から希少資源と誤解されがちだが、鉱物資源としての埋蔵量自体はそれほど珍しくない。問題は採掘・精錬コストを含めた工業的な実用性にある。南鳥島産レアアースの製品化には長期にわたる技術開発が必要であり、実用コストでの生産が可能かどうかはまったく未知数だ。加えて、採掘鉱物から実際に使えるのは約1割にすぎず、残る9割は不純物として環境負荷となって跳ね返ってくる。
こうした課題を克服している点で、中国は他を圧倒する。優良な鉱山を擁し、精錬コストも極めて低い中国は、世界のレアアース精錬量の約9割を握る。環境負荷低減技術においても中国の優位は揺るぎない。
自動車メーカーが推進する「電動化」も、この現実と無縁ではない。電動化の流れは環境対応から始まったものだが、その背景に天然資源をめぐる複雑な思惑が絡んでいることは、前回の拙稿「なぜ世界はEVに熱狂し、失望したのか?――「補助金疲れ」でも止まらない、国家とメーカーの消耗戦」(2026年2月16日配信)で論じた通りだ。
いずれにせよ、電動化は世界の潮流であり、日本メーカーが強みを持つハイブリッド車においても、中国産レアアースの安定調達なくして安定生産は成り立たないのが現状である。他の天然資源もBRICS諸国に偏在しており、仮に電動化を放棄してガソリン車に回帰したとしても事態は大きく変わらない。AIや半導体など高度化したモビリティを支える素材・部品もまた、中国依存の構造から抜け出せていない。中国は今やモビリティ産業にとって不可欠なプレーヤーである。