「俺たちの知見はもっと強くなる」 自動車業界の約9割が直面する「一次情報」の壁、その先に広がる新たな可能性とは
SDVへのシフトにともない、開発現場の「一次情報」が競争力の源泉となっている。しかし実態は、担当者の88.1%が活用に課題を抱え、知見が意思決定に直結する割合は2~3割に留まる。情報の氾濫が「判断の遅れ」を招く逆説のなか、工場の規模よりも組織の学習速度が問われる時代。知見を価値へ変える、真の経営力が試されている。
役職間の認識ギャップと情報滞留

いまや通信技術や人工知能の活用は避けて通れず、開発の対象は車両という枠を飛び越え、絶えず更新を繰り返すサービスへと広がり続けている。こうした構造の変化にともない、扱うべき情報の種類も量も膨れあがった。
実際、組織内での共有状況について「改善の余地がある」「改善の余地が大きい」とした回答は63.3%に及ぶ。興味深いのは、集めた一次情報が判断や承認に生かされる割合を尋ねたところ、
「2~3割程度」
という答えが37.2%で最も多かった点だ。情報の蓄積が、そのまま意思決定の質の向上に結びついているわけではない実態が見て取れる。
現状を前向きに捉える部長クラスに対し、実務を動かすマネージャークラスが強い課題を抱えている。この認識の差は、現場の複雑さに情報の流れが追いついていない証左ともいえるだろう。なかでも部長層は
「最新性・更新状況が分からない」
「関係者の確認・合意に時間がかかる」
「権限や共有制限でアクセスできない」
といった悩みを抱えており、こうした滞りが組織の機動力を削ぐ要因になっている。完成車メーカーの立ち位置が、多くの情報を束ねるプロデューサーへと移り変わるなか、知見を淀みなく循環させる仕組みを整えられるか――それが、企業の判断力を高めていくためのわかれ道になりそうだ。