自動車業界の底力を見くびるな――6割強が抱える「調べ直し」を、開発加速へ変えるナレッジ再編の最前線
モビリティ変革の裏で、開発現場は「情報の目詰まり」に喘いでいる。最新調査ではエンジニアの6割強が情報迷子に陥り、1割が週10時間超を探索に費やす実態が判明。不足情報の4割超は議事録等の社内資産だ。中間層を蝕むこの非効率を打破し、知見を淀みなく巡らせる構造への転換こそが、次世代競争の勝敗をわかつ。
開発現場を襲う情報の目詰まり

自動車の開発現場はいま、大きな曲がり角に立っている。これまでの機械工学を土台にしつつも、ソフトウェアや人工知能が複雑に絡み合うひとつの巨大な統合体へと姿を変えた。ハードウェアそのものによる差異化が難しくなり、機能やサービスがソフトウェアを通じて刻々と更新されるモビリティが広まるなかで、組織内にあふれる情報をどう循環させるか。それが、これからの競争を左右する実質的な論点となってきた。現場の切実な実態を裏付けるデータがある。エンジニアプラットフォームを手がけるファインディ(東京都品川区)が、2026年3月に行った調査だ(2026年5月20日発表)。完成車メーカーや部品メーカーの企画・開発部門で、新規事業やAI推進の核を担う226人の声を聞いた。
その結果、最前線に立つ人々の6割強が必要な情報にたどり着けず、同じことを何度も調べ直す事態に陥っていることがわかった。時間の使い方も深刻だ。全体の約1割は、一週間のうち10時間以上を情報の探索や整理だけに費やしている。半数以上の人が、少なくとも週に1時間はこうした「探しもの」に追われているのが現実だ。
組織のなかに知見は着実に積み上がっているはずだが、いざ判断を下そうとすると、そこに至るまでの道筋がひどく見えにくくなっている。せっかくの情報も、生きた形で取り出せなければ意味をなさない。探索に奪われている負荷を抑え、情報を誰もが使える形で解き放つことが、本来向き合うべき価値創造の時間を守り、次世代モビリティの歩みを前へと進める土台になるだろう。