自動車業界の底力を見くびるな――6割強が抱える「調べ直し」を、開発加速へ変えるナレッジ再編の最前線
モビリティ変革の裏で、開発現場は「情報の目詰まり」に喘いでいる。最新調査ではエンジニアの6割強が情報迷子に陥り、1割が週10時間超を探索に費やす実態が判明。不足情報の4割超は議事録等の社内資産だ。中間層を蝕むこの非効率を打破し、知見を淀みなく巡らせる構造への転換こそが、次世代競争の勝敗をわかつ。
ソフト競争を制する知見の循環

情報の巡りをよくするための試みは、いま大きな転換点を迎えている。これまでの「いかに探し出すか」という視点を超えて、情報が生まれるその瞬間に、後で使いやすい塊として整えておく。そんな工夫に重きが置かれるようになってきた。
日々の記録を自分たちのための備忘録で終わらせず、次に来る誰かの判断を支える素材へと昇華させる。自動車の車体がいくつもの機能部品を組み合わせて形作られるのと同じように、組織の知見もまた、プロジェクトや決断の単位ごとに切り出せる形で蓄えられていくべきなのだろう。そうすることで、活用の効率は目に見えて上がるだろう。
何かを探す時間と新しく生み出す時間を混ぜ合わせることなく、仕事の流れに沿って必要な知見が自然と手元に届く。こうした仕組みを整えることこそが、組織の足腰を強くしていく。
これから先、人工知能による検索や要約の力はさらに増し、探しものに費やす手間はいくらか軽くなるだろう。だが、道具が賢くなればなるほど、その中身となる情報の整え方や、背景となる文脈を編み込む力の差が、企業の地力として表れてくる。
いま、現場を覆っている非効率も、見方を変えれば大きな伸び代にほかならない。情報の持ち方を根本から見つめ直すことが、未来への飛躍につながる可能性を秘めているからだ。
5年後、あるいは10年後。開発の速さをわけるのは、目に見えるプロセスの良し悪しだけではなく、組織のなかに知見がどれほど淀みなく流れ、誰もがそれを使いこなせているか。そんな情報の循環の差が、モビリティ開発の命運をわかつことになるのではないだろうか。