自動車業界の底力を見くびるな――6割強が抱える「調べ直し」を、開発加速へ変えるナレッジ再編の最前線
モビリティ変革の裏で、開発現場は「情報の目詰まり」に喘いでいる。最新調査ではエンジニアの6割強が情報迷子に陥り、1割が週10時間超を探索に費やす実態が判明。不足情報の4割超は議事録等の社内資産だ。中間層を蝕むこの非効率を打破し、知見を淀みなく巡らせる構造への転換こそが、次世代競争の勝敗をわかつ。
届かない社内ナレッジの正体

自動車業界で「足りない情報」の中身を覗くと、意外な事実が見えてくる。不足がちな情報の多くは外部の調査データなどではない。自社の過去情報・過去事例(45.8%)や、日々の議事録・会議メモ(43.1%)、さらにはメール・チャット履歴(40.5%)といった、ごく身近な社内の一次情報なのだ。
技術の主戦場が機械からソフトウェア、通信へと広がり、組織に蓄まる知見の密度はかつてないほど高まった。ところが皮肉なことに、専門性が深まり独自の文脈で言葉が交わされるようになればなるほど、他部門や後のプロジェクトがその意図を正確に把握することは難しくなる。
情報はあるのに、組織の壁を越えて必要な場所へ届かない――こうした目詰まりは、多機能化を突き進んできた現代の組織が生んだ副作用といえるだろう。情報の出どころから使い手までを滑らかにつなぐ、そんな情報の流し方がいま改めて問われている。
開発サイクルが加速度的に短縮されるなか、現場の判断には速さが求められるようになった。調査によれば、情報の整理や要約に
「週10時間以上」
を費やす人々が約11%にものぼるという。これは本来、新しい価値を生み出すための思考に充てられるべき時間だ。
「探す」という行為の重みが、新しい知見を生むための体力を削り取ってしまう。開発のなかで日々生まれる膨大な知見を、使いやすい形で蓄え直す。そこから価値が生まれる流れを整えることが、組織の機動力を高めるための一歩になるのではないか。