「返礼品 = ポルシェ」が現実に? 自治体の6割が動く、ふるさと納税“モノ離れ”の新潮流
受入額1.2兆円超と過去最高を更新したふるさと納税が、「モノ」から「移動」へ劇的な転換を見せている。ユーザーの7割が体験型に関心を寄せる中、EV貸出やタクシー周遊といった「モビリティ版」は寄付件数が2021年度比210%と急伸。地域の足を支え再訪を促す、新たな地域経済循環の最前線を追う。
モノから移動体験への転換

ふるさと納税の返礼品といえば、これまでは高級牛肉や海産物といった「モノ」の印象が強かった。しかし現在、この制度は新しい局面を迎えている。
返礼品として注目を集め始めているのは、タクシーの利用券や電気自動車(EV)のカーシェアリング、あるいは観光列車の乗車券といったメニューだ。移動体験そのものを価値として提供する。総務省の現況調査によれば、2024度の受入件数は約5900万件、控除適用者数は約1080万人に達した。市場は今も拡大を続けている。
この成長の過程で、移動のサービス化が具体的な形となり、実社会へと浸透しつつあるようだ。物品を送る段階を越えて、現地の移動手段を使う権利が流通する。こうした流れが、モビリティ経済の地平を広範な領域へと押し広げている。
加速する体験型へのシフト

寄付の関心は、もはや物の受け取りだけには留まらない。現地での体験をともなう返礼品を選ぶ動きが、ここへきて加速している。
トラストバンク(東京都品川区)が2023年4月に行った調査によれば、体験型の品をもらった経験がある人は33.2%に達した。まだ経験はないが関心を寄せている層も44.1%にのぼる。こうした意識の変化は、所有から利用へと価値の源泉が移り変わる産業全体の潮流とも重なるものだろう。
合計で7割を超える人々が体験を重視している事実は、移動手段そのものを返礼品に据えた
「モビリティ版ふるさと納税」
が、地域経済を支える新しい基盤として浸透していく姿を映し出している。移動をひとつの価値として楽しむ文化の広がりは、産業の枠組みを実体験に基づいた形へと広げているようだ。