「陸の孤島」が、いまや企業に選ばれる? 東九州道10年、1.6兆円で変わった物流・工場・地域経済の勢力図とは

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東九州道の開通から10年。累計1.2億台が行き交い、1.6兆円の経済効果を生んだ一方で、物流や産業の勢力図も大きく変わった。地域を結ぶ「道」は、東九州の商いと競争の形をどう変えたのか。

産業と命の距離を縮める高速網

宮崎県で有名な飫肥杉の森林(画像:写真AC)
宮崎県で有名な飫肥杉の森林(画像:写真AC)

 一次産業の現場では、畜産と林業の勢いが目覚ましい。

 宮崎県を例に見ると、2023年の畜産産出額は2483億円まで伸び、全国3位という過去最高の数字を叩き出した。九州の外へと運び出される畜産品も、1980(昭和55)年の7.4万tから2023年には25.1万tへと約3.4倍に膨らんでいる。なかでも関東向けは2.2万tから13.8万tへ、実に約6.2倍もの急増を見せた。

 林業の現場もこれに続く。製材品の出荷量は1985年の66.3万平方メートルから、2021年には100.6万平方メートルへと広がった。県外向けが約2.1倍の73万平方メートルにまで伸びた結果、2020年には製材品出荷量で全国1位の座を射止めている。こうした数字の裏側にあるのは、生産者たちが

・鮮度
・時間

という縛りから解き放たれ、全国市場という大きな土俵へ打って出たという事実だ。

 製造業の分野では、半導体の存在が際立ってきた。2023年の国内における出荷額2.11兆円のうち、九州はおよそ55%にあたる1.15兆円を占めている。道がつながった2016(平成28)年以降、沿道には34件もの工場が新たに建った。物流の揺らぎを嫌う企業側からすれば、高速道路は運びの不確かさを取り除くための確かな備えといえる。企業はこの道を、自社の工場にある生産ラインを外まで引き延ばしたものとして使いこなしている。

 また、医療の現場でも道が開通した意味は重い。大分と宮崎の両県では、救急病院まで30分以内で着ける距離に住む人が約9万人、60分以内なら約22万人も増えた。細かく見ると、大分県では30分圏内が54万人から61万人へ、60分圏内が84万人から101万人へと広がり、宮崎県でも30分圏内が54万人から56万人へ、60分圏内が92万人から97万人へとそれぞれ底上げされた。人々の命を守る仕組みが、いまやインフラがどれだけ動いているかに深く結びついていることがわかる。

 観光に目を向ければ、人の流れが目に見えて変わった。宮崎県日向市では、サーフィンを目当てに来る客が2005年前後の約8万人から、2017年には31万人にまで増えた。クルーズ船の寄港も、2011年から2013年の年平均27回に対し、2023年から2024年には51回に達している。各地の港への寄港数は1.5倍から2.8倍に伸びており、アクセスの改善が都市部への偏りを崩し、周辺の町を新たな稼ぎ場へと変え始めている。

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