打率4割は「快挙」か「失格」か? 経産省リポートが浮き彫りにした、交通の「生き残る地域」と「消えた構想」の境界

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国と経産省が進めたスマートモビリティ事業は7年で終了。73地域のうち実装は約4割にとどまり、移動サービスの収益性と制度設計の難しさを浮き彫りにした。成功と撤退が混在する実証の実像とは何か。

生活を支える日本型MaaSの胎動

7年間の成果と今後の方針(画像:経済産業省)
7年間の成果と今後の方針(画像:経済産業省)

 スマートモビリティチャレンジが残した大きな足跡は、日本ならではといえる移動の形を形作ったことだ。その象徴といえるのが、ソフトバンクとトヨタ自動車の共同出資会社MONET Technologies(東京都千代田)などが進める

「医療MaaS」

である。医療機器やモニターを積み込んだ車両が患者の自宅近くまで赴きオンライン診療などを行う仕組みで、2026年2月時点で全国27の地域で走り出している。

 人が病院へ向かうのではなく医療の側を動かすことで不便さを取り除いた点は興味深い。移動手段を増やすことだけを目指したわけではないことがわかる。通院のハードルを下げることで診察を受ける人を増やし、病気が重くなるのを未然に防ぐ。将来ふくらむ社会保障費を抑えることにつながるわけだ。交通を医療や福祉といった隣り合う分野の損得の中に組み入れたことが、継続を実現する確かな力となった。

 住民が本当は何を求めているのか、その問いに向き合い4割の事業が実装までたどり着いた事実は、上々の成果と呼んで差し支えない。先行きが見えにくい地方市場で、長く続くビジネスの種を選び抜いてきた。

 生き残った4割は、もはや交通という枠組みを越え、日々の暮らしを支える土台へと育っている。7年にわたる活動で積み上げた知見は、これからくる超高齢社会における大切な道しるべになるだろう。

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